ここ数年、9月の防災週間に合わせてこのblogでは「格安スマホ」(MVNO)と災害に関するご案内を掲載してきました。特にSIMフリースマホにおける緊急速報(緊急地震速報)は皆さんの注目度が高く、度々状況を調べてお伝えしています。この件ついて、2018年に入ってずいぶんと状況が変わりましたので、改めて一連の情報をまとめなおしてご紹介したいと思います。

目次

緊急速報について

災害発生時や、近隣国のミサイル発射などの際には、国・自治体から様々な情報が発信されます。この中でも重要なものは「緊急速報」として、皆さんがお持ちのスマートフォンに通知され、メッセージの表示・警報音の鳴動が行われます。大手携帯電話会社ではそれぞれ「エリアメール」(docomo)、「緊急速報メール」(au, SoftBank)という名称で提供されているものです。

MVNOをご利用の場合、一般的にそのMVNOが設備を借りている大手携帯電話会社の緊急速報メッセージを受信することが可能です。MVNOによっては複数の携帯電話会社から設備を借りていることがありますが、その場合、利用しているMVNOのプラン(SIMの提供元)によって受信するメッセージが異なります。IIJmioの場合、タイプD(docomo回線利用)の場合はdocomoのエリアメールを、タイプA(au回線)の場合auの緊急速報を受信します。

MVNO利用者が受信する緊急速報
MVNO利用者が受信する緊急速報

ただし、受信したメッセージが画面に表示され、警報が鳴動するためにはお使いのスマートフォンが緊急速報に対応している必要があります過去に販売されたSIMフリースマホの中には、緊急速報に対応していないものがあり、その場合メッセージを受信しても画面表示が行われず警報音も鳴らないことがあります。

スマートフォンの緊急速報対応状況は機種ごとに異なりますが、概ね以下のように考えていただければよいと思います。

スマートフォンの緊急速報(ETWS)対応状況
スマートフォンの緊急速報(ETWS)対応状況

緊急速報にはいくつかの種類があります。気象庁が発出する「緊急地震速報」(地震・津波)、自治体が発出する水害や地滑りなどその他の警報・避難指示、内閣官房が発表するミサイル発射・テロなどの情報です。Android 7.1以前の機種では、地震・津波以外の警報について、メッセージの表示・警報の鳴動が行われないことにご注意ください

なお、IIJmioで2018年以降に発売したスマートフォンは、一部を除いてAndroid 8.0以降を搭載しています。

Android 7.1以前のスマートフォンで一部の警報に対応できないのは、以前のAndroid(スマートフォンに搭載されている基本的なプログラム)に対応機能が用意されていなかったことが理由です。Android 8.0以降で対応機能が用意されました。本件についての技術的な詳細は、以下の記事をご覧ください。

緊急速報についての補足事項

緊急速報対応のスマートフォンを利用していても、メッセージを受信しないことがあります。

緊急速報機能がOFFになっていた
SIMロックフリースマートフォンでは、出荷時点で緊急速報の警報表示がOFFになっている場合があります。設定をご確認ください。
配信エリア外だった
各種警報は、地域単位で配信されています。警報送信時に配信エリア外にいた場合、警報音は鳴りません。配信エリアは携帯電話の基地局単位で区切られており、その基地局の電波を受信しているスマホに一斉に信号が伝わる仕組みです。都道府県の境目などで隣のエリアの基地局の電波を受信している場合、実際の居場所にかかわらず警報音が鳴らない事もあります。
たまたま信号を受信しなかった
緊急速報で使われているETWSという仕組みは、短時間に大量のスマホに信号を伝達するための特別な通信方式です。その一方で、送信が成功したかをチェックするような仕組みはなく送信された信号が確実に全部のスマホに届くことは保証されていません。そのため、付近の電波状態や、スマホの状態によって、信号を受信できない場合があります。信号を受信できなかった場合、そのスマホは反応しません。この現象はSIMフリースマホだけでなく、大手携帯電話会社のスマホでも発生します。地震発生時に周りのスマホが一斉に警報音を鳴らす中、自分のスマホだけ警報が鳴らなかった…という事例はしばしば発生しています。

緊急速報に非対応のスマホをご利用の場合

緊急速報に非対応のスマートフォンを利用している場合、緊急速報受信のためのアプリをインストールすることでメッセージを受信することができます。ただし、これらのアプリで使われている通信方式は、緊急速報用の特別なもの(ETWS)ではなく、一般のインターネット通信と同様です。このため、インターネットの混雑状況によっては警報が届かないことがあります。

また、これ以外にも緊急速報はテレビやラジオ、大規模なビルの館内放送などでも配信されています。こういった手段も情報収集にご活用ください。

災害用伝言板(安否情報)について

電話番号を使った安否情報の登録

災害発生時には、被災地域での通話・通信が行いにくくなることがあります。この対策として各電話会社が「災害用伝言板」を開設しています。

これらのサービスは各携帯電話会社の契約者向けに提供されているものです。同様のサービスはNTT東日本・NTT西日本において「災害用伝言板(web171)」という名称で提供されており、こちらはMVNO利用者でもご利用いただくことができます。

web171
web171

docomo, au, SoftBank, Y!mobileおよび、NTT東西の災害用伝言板は相互に連携しており、一カ所に情報を登録すれば他の伝言板からもその情報が検索・参照できます

名前による安否情報の登録

電話会社の災害用伝言板は、電話番号を使って安否情報の登録を行います。氏名を使って安否情報を登録するサービスとして、「Googleパーソンファインダー」が提供されています。

Googleパーソンファインダー
Googleパーソンファインダー

普段LINEやメールで連絡を取ることが多く、電話番号をあまり意識していない場合は氏名で登録可能なこちらの方が便利かもしれません。

安否情報の一括検索

各社の災害用伝言板、Googleパーソンファインダーを含めて一括検索するサービスとして、NTTレゾナントのJ-anpiがあります。J-anpiは協定を結んでいる自治体が提供する安否情報も検索することが可能です。安否情報を検索される方は、こちらのサイトも活用ください。

J-anpi
J-anpi

今年に入ってからも度々大規模な災害が発生し、多くの方が影響を受けられたかと存じます。被害を受けられた皆様に心よりのお見舞いを申し上げます。災害に際しスマートフォンが活躍できる場所は必ずしも多くはありませんが、こうした情報が皆様の被害軽減に少しでも役立てば幸いに思います。