IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.150 もくじ

iijnews150

  • ぷろろーぐ「梅の香と沈丁花」 鈴木 幸一
  • 特別対談
    100回目を迎えた トワイライトコンサート
    三井住友フィナンシャルグループ 執行役社長 國部 毅 氏
    IIJ 代表取締役会長 鈴木 幸一
  • Topics 個人データ保護法制を取り巻く世界情勢
    • GDPRから始まるプライバシー保護
    • 個人データ保護のためのリスクアセスメント
    • 中国サイバーセキュリティ法への対応
    • カリフォルニア州 消費者プライバシー法について
    • 世界の主なプライバシー保護法制
  • 人と空気とインターネット: 独創的な日本酒造り (浅羽 登志也)
  • インターネット・トリビア: ドメイン・レジストリ・レジストラ (堂前 清隆) ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド: 国際結婚してみました

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: ドメイン・レジストリ・レジストラ

Webサイトでも、メールアドレスでも、インターネット上で団体や個人を示すために使われるアドレスには、ドメイン名が含まれています。一時期、ドメイン名そのものを企業名とする「ドットコム企業」が流行ったこともありましたが、そうでなくとも、そのドメイン名を長く使うことによって得られた認知や信頼は、ある種の財産といっても良いでしょう。もちろん、検索サイトの表示順位や、Webサイトの暗号化・身元確認のためのSSL(TLS)証明書も重要ですが、これらも結局のところ、ドメイン名の評判や信頼性を高めるものであって、ドメイン名が失われれば意味をなしません。

今では、ほとんどの企業が自社のドメイン名を登録しており、個人でもブログやメールアドレスのためにドメイン名を登録しているケースも少なくありません。ドメイン名は、利用者がドメイン名登録サービスを提供している事業者に定期的に費用を支払うことで利用しています。こうしたサービスを提供する事業者は世界中にたくさんありますが、いったいドメイン名とは、どのように管理されているのでしょうか?

ドメイン名は世界中で重複しないように管理されなければなりませんので、それを調整するための機関が必要になります。現在は、国際的な非営利団体であるICANNのなかにあるIANAがその役割を担っています。しかし、ICANNが直接、世界中のドメインを全て管理しているわけではありません。ICANNが行なうのは、“.com”や“.jp”といった「トップレベルドメイン(TLD)」を管理する団体を指定することです。それぞれのTLDのなかにどのようなドメインを設けるかは、一定の範囲で指定された組織に任されています。

各TLDは、レジストリ・レジストラという複数の組織によって管理されています。レジストリはTLD毎に一つだけ存在しており、そのTLDのルールを策定するとともに、登録されているドメイン名のデータベースを管理する責任を持ちます。一方、レジストラはドメイン名利用者からの依頼にもとづき、レジストリにドメイン名を登録する窓口を担当しています。データベースの管理という公共的な側面を持つレジストリと、顧客サービス的なレジストラを分離しつつ、複数のレジストラが競い合うことでサービス向上を目指すという仕組みです。

この仕組みは、インターネットが急速に発展した1990年代末期から順次、整備されました。それ以前は、黎明期からインターネットに強い影響力を持っていた米国政府のもと、特定企業がドメインを管理していましたが、インターネットのグローバル化にともない、新たな管理体制が敷かれたのです。

こうした動きと併せて、TLDのバリエーション自体も増えています。2000年までに使われていたTLDは、“.jp”や“.uk”など国毎に割り当てられているものと、“.com”や“.net”のように歴史的に使われていた、国によらない数個のTLDのみでしたが、2001年以降、順次新しいTLDが追加され、現在は1900個以上が登録されています。

これらのTLDは、適切な要件を満たした組織がICANNに申請することで利用可能になります。TLDを登録した組織はビジネスとして費用を取って、TLD内のドメインを他の組織や個人に提供しても構いませんし、自社専用に利用することもできます。2014年には、“.tokyo”や“.みんな”といった新しいTLDも利用可能になり、大きな話題を呼びました。また、日本企業のなかにも自社のブランド名自体をTLDとして登録し、自社のコンテンツのために利用する企業も現れています。