IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.136 もくじ

iijnews136

  • ぷろろーぐ「野蛮なままで」 鈴木 幸一
  • Topics 企業の資産を守る情報セキュリティ
    • インタビュー ICT社会のサイバーセキュリティ
    • CSIRTの本質
    • 事件は「エンドポイント」で起こっている
    • 見過ごせない!?WEBアクセスのセキュリティ
    • "認証"強化の具体例
  • 人と空気とインターネット インターネットの「第三の波」
  • Technical Now
    • 情報系システム「オフィスIT」事例紹介
    • 進化するBiznet GIO Cloud
  • インターネット・トリビア スマートフォンと位置情報 ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド クラウドセキュリティ規格「MTCS」認証取得までの道のり

インターネット・トリビア: スマートフォンと位置情報

道に迷ったとき、目的の店が見つからないとき、スマートフォンをさっと取り出して地図アプリを開けば、「現在位置」を中心とした地図を見ることができます。今ではすっかり当たり前になったこの技術ですが、スマートフォンは現在位置をどのように調べているのでしょうか?

これには大きく分けて三つの技術が使われています。

一番よく知られているのは、GPS(Global Positioning System)です。GPS は上空2万メートルの位置を周回している複数の人工衛星から発信される電波を用いて自分の位置を調べるシステムです。GPS 衛星にはとても精度の高い時計が搭載されていて、スマートフォンが受信した複数の衛星の時刻のズレを比較することで自分の位置を割り出します。

GPS は比較的精度が高く、条件が整えば数メートルの範囲で現在位置を特定できます。また、現在30機以上の GPS 衛星が地球上にまんべんなく配置されており、世界中で利用できます。その反面、GPS には弱点もあります。ひとつは位置を特定するのに時間がかかること、もうひとつは人工衛星の電波を受信できない屋内や地下では利用できないことです。前者については、スマートフォンの場合、携帯電話網を使って GPS の補助情報を取り込むことで、位置の特定に要する時間を数秒程度にまで短縮できます。しかし、後者については良い解決方法がありません。GPS 衛星の電波はそれほど強くないため、コンクリートのビルなどでは窓際を離れると電波を受信できなくなってしまいます。

現在位置を特定するためのふたつ目の方法は、携帯電話の基地局の情報を使うことです。携帯電話の基地局が設置されている位置はある程度わかっているため、スマートフォンがどの基地局から電波を受けているのかによって、自分の大まかな位置を調べることができます。この方法であれば、衛星の電波を受信できない屋内でも大丈夫です。しかし、精度の問題があります。基地局が細かい間隔で設置されている都市部であれば、ほぼ精確な情報を得られますが、山間部など基地局間の距離が広がると、大まかな情報しか得ることができません。場合によっては、数キロメートル単位で誤差が出ることもあります。

三つ目の方法として、Wi-Fi のアクセスポイント情報から現在位置を特定する方法があります。携帯電話の基地局と同じように、アクセスポイントの設置場所がわかっていれば、周辺にある基地局の情報から位置を特定することは可能です。しかし、Wi-Fi のアクセスポイントは会社や個人が自由に設置できるため、どの基地局がどこに設置されているのか、一元的な管理は行なわれていません。そこで、事前にアクセスポイントの位置データベースをつくるという準備が必要になります。実は、Android スマホや iPhone には、このような情報収集の仕組みが備わっています。GPS でスマホの現在位置を特定できたとき、周囲にあるアクセスポイントの情報を収集し、それらを Google や Apple のサーバに送信してデータベース化しているのです。

このような方法でデータベースをつくっているため、Wi-Fi アクセスポイント情報を使って現在位置を調べると、思わぬ結果になることがあります。例えば、アクセスポイントを移動させたのに、以前の設置場所がデータベースに登録されたままになっている場合があり、それを使って位置を調べた結果、現在地とまったく異なる場所が表示されてしまう、といったことが起こっています。

それぞれの仕組みには一長一短があります。スマートフォンで位置情報を取得する際には、場所の特性に応じて適切な方法が自動的に選択され、その結果が地図アプリなどで表示されるようになっているのです。