本日の記事は、このプロジェクトを推進している基盤プロダクト開発部 山崎の執筆でお送りします

IIJ山崎です。今日はエイプリルフールですね。皆様お楽しみいただいていますでしょうか。さて突然でありますがIIJから大事なお知らせがありますので、みなさまご一読をいただきたくお願い申し上げます。

IIJ、同人誌即売会に初参加します!

同人誌即売会とは、自作の本・グッズ・CD・DVDを販売するイベントのことです。「コミックマーケット」(通称コミケ)が有名ですが、他にも同人誌即売会はいっぱいあります。女性が中心の「SUPER COMIC CITY」(通称スパコミ)、東方Projectオンリーの「博麗神社例大祭」、オリジナル作品限定の「コミティア」など、です。

IIJはそのなかの一つ、文学作品オンリーの同人誌即売会「第十八回文学フリマ」に参加します。

とは言っても同人誌の販売やグッズ販売はいたしませんで、私どもが可能な形でサポートをさせていただきたいと思います。つまり、どういうことかと言うと……

オフィシャルインターネットプロバイダーとして

IIJは「第十八回文学フリマ」会場内にて無線LANによるインターネット接続サービスを提供いたします。

第十八回文学フリマ

日時
2014年5月5日 (月曜・祝日) 11:00~17:00 (予定)
場所
東京流通センター 第二展示場 (E・Fホール)
東京モノレール「流通センター」駅 徒歩1分
イベント案内
第十八回文学フリマ開催情報 (文学フリマ事務局)

会場内では快適・高速な無線LANによるインターネット接続を無料でご利用いただけます。端末の種類は問いません。無線LAN(Wi-Fi)に対応している端末であればどれでも無料で使えます。スマートフォン、タブレット、ノートPC、などからご自由にどうぞ。電子書籍、文学フリマWebカタログ、小説サイト、TwitterやFacebook、ツイキャスやニコニコ生放送などにご利用いただけます。ぜひご利用ください!

ところで意外に思われるかもしれませんが、同人誌即売会に焦点を当てて無線LANサービスを提供している事例は、コミケを除くとほとんどありません。オフィシャルインターネットプロバイダーとして単独で提供するISPはIIJが国内初となります。どうして他のISPが参入しないのか不思議に思われるかもしれませんが、これには深い理由があります。実は同人誌即売会は無線LANにとって最も劣悪な環境なのです……。

同人誌即売会固有の技術的困難

1. 会場がめちゃくちゃ広い

文学フリマ会場図
文学フリマ会場図

今回の文学フリマの会場は東京流通センター第二展示場Eホール・Fホール(合計4000㎡)です。これはバスケットコート約10面分の面積があります。比較のため図にしてみました。

IIJ社内会議室も参考までに置いてみました。もう大量のアクセスポイントを設置しないとカバーできません。大量に置くだけで済むなら良いのですが……

2. 人が多い

無線LANで利用される電波は、水に吸収されやすい性質を持っています(昔のアナログテレビで雨の日に映りが悪くなったりしていたことを思い出してください)。ご存じの通り、人体はほとんど水で出来ているので当然電波を吸収する性質を持っています。無線LANの通信を良くするためには人がいない方が良いのです!しかし人がいない場所でアクセスポイントを提供しても意味がありません。

いちおう無線LANには電波の状態に応じて通信方法を適切に切り替える機能があります。電波状態が悪くなったら自動的に低速な通信方法に切り替え、安定した通信をするようにしてくれます。しかし同人誌即売会ではユーザが移動しながら利用する上に、ユーザの周囲にいる参加者の皆様も移動するため電波の状況がめまぐるしく変わります。通常のオフィスや会議室といった環境とはぜんぜん違うのです。果たしてうまくいくのでしょうか。誰にも分かりません。

3. 端末の種類が多い

数千人の来場者の端末のなかに、もしかしたらうまく接続できないものがあるかもしれません。今回用意する機材は入手できる範囲で多種多様な端末でのテストをパスしています。ですが、国内で利用できるすべての端末と相性問題なく接続できることを保証するのは大変困難です。

4. 反射による悪影響を事前回避できない

アンテナから出た電波がコンクリートや床や天井材に当たると、減衰しつつ反射します。この反射によって電波間の干渉を起こし、通信に悪影響を与えます。通信速度が遅くなったり、ひどい場合には通信できなくなる場合があります。反射がどのくらい通信品質を劣化させるのかは実際に設置して通信してみなければわかりません。

普通は事前に現地で設置してテストをし、カバーエリアや反射の問題をクリアした上で本番に臨みます。しかし今回は前日までぎっしりと別のイベントのために会場が使われてしまっているので、当日ぶっつけ本番でなんとかやってみるしかありません

5. 電波干渉が問題になる

無線LANのアクセスポイントが複数設置された場所では、それぞれのアクセスポイントの電波が干渉を起こすことがあります。干渉が起こると、通信が途絶えたり速度が遅くなったりするという問題が発生しやすくなります。さらに、最近は多くの方が「Wi-Fiモバイルルータ」を持ち歩いていらっしゃいますが、それぞれのモバイルルータがアクセスポイントとして動作するため、干渉の原因になります。大規模なイベントでは、持ち込まれるモバイルルータの数も多いため、干渉による通信品質の劣化が問題になっています。(参加者の皆さんが持参されるモバイルルータは、できるだけ電源をOFFにしていただくよう、ご協力をお願いします)

6. 設営に時間をかけられない

今回のアクセスポイントは当日の朝8:30から設営をスタートして、出店者入場の10:00には設営を終えなければなりません。たった1時間半で設営をしなければなりません。しかも私どもの作業とは別に、主催者さま主導で机の配置作業も同時進行します。

正直かなり厳しいです。

普通は前日1日をまるまる使ってやるようなものです。前日から設営できたら良いのですが、会場のレンタル費が1時間につき数十万円もかかってしまうためNGとのことでした。

7. 配線が大変

会場である東京流通センター第二展示場にはケーブル敷設用のピット(溝)がありません。4メートルの高さの天井に這わせるか、床を這わせるしかありません。IIJグループにはもちろん配線のプロもいるのですが、このプロジェクトは普段プログラムを書いている開発スタッフ自身が仕切っています。開発スタッフは基本的に全員モヤシっ子なので4メートルの脚立に登る度胸も体力もありませんし、あったとしてもチンタラとやっていては設営のリミットに間に合いませんで、床を這わせる以外に選択肢がありません。参加者の足の迷惑にならないようになんとかしないといけません。

8. 性能目標が決められない

同人誌即売会で無線LANをサービスすると、どのくらいの台数が接続されるのか、それらがどのくらいの量の通信をするのか、さっぱりわかりません。ですから性能目標が立てられません。目標がないと設計ができませんし、機器の手配やバックホール回線もできません。しかたないので勘と経験と度胸でかなりの余裕をもった数値を設定しました

こんな具合で、そもそも同人誌即売会で快適に使える無線LANインターネット環境を提供できるようにすること自体が非常に困難なのです。文学フリマよりも規模の大きいイベントとなるともっと大変です。コミックマーケットは大手通信キャリアが総力を投入しているにもかかわらず快適な通信環境に至らない状況が続いているのです。大手通信キャリアが総力を投入しているにもかかわらず、です。電子書籍が登場し、ソーシャルメディアが勃興し、Webカタログの提供も始まり、さらにPayPal HereやSquareなどのモバイル決済も普及しつつあるなど同人誌即売会でのネットの需要が高まる一方です。私たちは持てる限りのノウハウと技術をふんだんに使い、可能な限りの努力をもって文学フリマに望みたいと考えています。

注目してほしいポイント

1. 機材はIIJ独自開発

SA-W1
SA-W1

IIJ製の次世代ネットワークアプライアンス「SA-W1」を大量に用意しました。これを無線LANブリッジとして設定し配備して広大なカバーエリアを確保する予定です。また、ゲートウェイルータにIIJが独自に開発した高機能ルータSEIL/X1」「SEIL/X2」を複数台使用して通信負荷を分散させます。

そして、それらの機材に文学フリマのために開発した特別なファームウェアを投入します。今後追加する予定の機能を先取りした、スペシャルバージョンとなります。

2. 経験豊富なスタッフ

無線LANルータの開発を担当しているエンジニアが直接現地にて設営作業を実施します。トラブルシュートも開発者自身対応いたします。万が一プログラムの不具合があった場合、その場で修正することも可能です。機材のトラブルはすべて開発者自身で切り分けをし、現地にて直接対応します。また、現地にて発生した不具合は後日かならず修正します。

3. (別の意味で)経験豊富なスタッフ

コミックマーケット、コミティア、文学フリマなど国内の即売会にサークル参加(出店)・一般参加ともに経験のある、同人経験豊富なスタッフが中心となって進めています。コピー誌からオフセット印刷、委託から直参まで、サークル参加者としても数々の場をこなしています。

4. SMFを使った迅速な展開

SMFイメージ
SMFイメージ

会場に多数の無線LAN機器を設置するのはいいのですが、それらの大量の機器を設定して、運用・管理するのがとても大変です。そこで活躍するのがIIJの開発したSMFと呼ばれるシステム。SMFはIIJに設置された管理サーバを使って、多数の機器の設定・管理を一括してコントロールできるシステムです。

イベント開催中に混雑するなかアクセスポイントの設置場所までわざわざ出向かなくても、このシステムを使えば多数の機器の挙動を一カ所から管理できるのです。無線LANのチャンネル変更やパワーの調整、電波干渉源の検出など、会期中の安定運用のために欠かせないオペレーションもSMF経由で実施します。

5. IPv6対応

IPv6 Ready
IPv6 Ready

当日の会場では次世代インターネットプロトコル「IPv6」がご利用いただけます。利用の際にとくに設定は必要ありません。スマートフォンやタブレットでGoogle、Facebook、YoutubeといったIPv6対応サイトにアクセスすると、気づかぬうちにIPv6経由でつながっている(はず)です。

文学フリマはIPv6が使える国内初の同人誌即売会になることでしょう。

IPv6が使えているかどうかを知るには、以下に貼り付けたイラストをご覧ください。IPv6でアクセスすると本ブログ主筆の堂前が……!!

帽子は脱げていますか?いればIPv6経由になっています。

※IIJ製の高機能ルータ「SEIL/X1」「SEIL/X2」はIPv6 Ready Logo Program Phase2認定製品です。

6. 高速光ファイバー回線

無線LANアクセスポイントとインターネットとを接続する回線に、光ファイバーによる1Gbpsの回線を準備します。東京流通センターでの利用実績のある回線でもっとも高速で、これ以上のものはないということです。

実際にやってみなければわからない要素が多いため、「つながらない」「使えない」という評価をいただく可能性が大いにあります。しかし、失敗に終わったとしても貴重な価値ある一歩です。同人誌即売会への無線LANサービス提供における技術的困難には誰かが腰を入れて立ち向かわねばならないのです。私たちはこの挑戦によって得られた知識・教訓をIIJ社内で秘めておくのではなく、できる限り公開していく予定です。

それではみなさん、5月5日、第十八回文学フリマの会場でお目にかかりましょう。。どうぞIIJの提供する無線LANによるインターネットをぜひご利用ください!

本日(2014年4月1日)はエイプリルフールですが、この記事の内容はウソではありません。

取材ご希望の方は弊社広報部までご連絡下さい。(担当:村田)

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