IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.newsで連載しているコラム「インターネット・トリビア」と連動しています。
コラムの前半部分はIIJ.news vol.116(PDFで公開中)でご覧下さい。

インターネットにおける「純広告」

前編ではインターネット特有の広告出稿方法として「アドネットワーク」を紹介しました。とはいえ、インターネットで取り扱われている広告のすべてがアドネットワーク経由というわけではありません。新聞や雑誌と同じように、広告掲載枠を指定して出稿される広告も沢山あります。このような出稿方法は「純広告」(純広)と呼ばれます。

ところで、この「純広告」という言葉。インターネット広告業界ではいろいろな意味で使われており、単純に「アドネットワーク」の対義語と言うわけではありません。以下のいずれの意味に対しても、対義語として使われています。

純広告の対義語
純広告の対義語

純広告 vs アドネットワーク

「純広告」では掲載媒体や位置など、あらかじめ定められた「広告枠」を指定して広告が出稿されます。アドネットワークでは広告枠を明示的に指定することはなく、ネットワークに参加している媒体のなかから条件にあう媒体に広く広告が配信されます。

純広告 vs 記事広告(記事広・タイアップ記事)

「純広告」では掲示する広告は広告主の責任で制作され、いかにも「広告」という体裁をしています。記事広告では、広告を掲載する媒体側が制作し、その媒体に掲載されている広告以外の記事と似た体裁をしています。

純広告 vs 成果報酬型広告(アフィリエイト)

「純広告」では広告表示回数(Imp)や、広告の掲載期間によって広告費が決定します。
成果報酬型広告では広告閲覧を契機として行われた商品購入や、契約などの「成果」の内容に応じて広告費が決定します。

純広告 vs クリックインセンティブ広告

「純広告」では広告閲覧者がその広告をクリックしたとしても、特に見返りはありません。クリックインセンティブ広告では、広告をクリックした人に、何らかの見返り(ゲームサービスのポイントなど)がキックバックされます。

インターネット以外の広告では、「純広告」は「記事広告」の対義語として使われることがほとんどです。ところがインターネット広告では文脈によって、何を指して「純広告」と言っているのかが変わってきます。

例えば、アフィリエイト広告とそれ以外の広告の違いを論じている文脈では、仮にその広告がアドネットワーク経由であったとしても、アフィリエイトではない広告を「純広告」と呼ぶことがあります。

どうしてそんなに用語が混乱しているのか

インターネット広告において「純広告」に対する対立概念がこれだけ多岐にわたっているというのは、大変興味深いことです。なぜなら、これは従来の広告媒体に対して、インターネット上の広告出稿方法が多種多様であることを示しているからです。

なぜインターネットではこれだけ多様な出稿方法があるのか、それはインターネット上の広告は、その成果の追跡が行いやすいという性質に起因しています。

インターネット広告についての統計情報の一例
インターネット広告についての統計情報の一例
ページビュー(PV) 広告が掲載されたWebページの表示回数
インプレッション(Imp) 広告の表示回数
クリックスルー(CT) 広告がクリックされ、閲覧者が広告主のWebページに到達すること
クリックスルーレート(CTR) 広告がクリックされた割合 (クリックスルー数/インプレッション数)
コンバージョン(CV) 広告を契機として、契約獲得や、その他の目的が達成されること
コンバージョンレート(CVR) 目的が達成された割合 (コンバージョン数/クリックスルー数)

これらのデータは、広告の配信やクリックの管理を行う広告配信システムにリアルタイムで蓄積されます。たとえば、アフィリエイト広告では「広告をクリックした人」と「商品を購入した人」のそれが同一人物であることを識別できなければ成立しません。広告配信システムがこのような情報を蓄積しているからこそ、実現可能なのです。

従来の広告媒体では、このように詳細な情報を得ることは極めて困難でした。それに比べて、インターネット上の広告はとても多くの情報を媒体の運営者や広告主にもたらしてくれます。それが前述したような出稿方法の多様化に繋がっているのです。

複雑化しすぎる側面も

ですが、前述のアフィリエイト広告のように、インターネット上で完結する明確なコンバージョンがある場合を除き、最終的な「広告の成否」を判断することは相変わらず困難です。数字に表れるのは、閲覧者が広告を見た前後の僅かな行動だけであり、それが広告閲覧者の最終的な行動にどのように作用したかは、得られた情報から推測を重ねてモデルをつくるしかありません。

そのため、広告配信システムの開発元では、より精度の高い出稿・効果測定を実現するために、より多くの情報を集めようとしています。ですが、情報の収集に注力しすぎるあまりに閲覧者に不快な思いをさせてしまうと言ったケースも発生しており、「節度を保った情報収集」を行う事が必要だという声が大きくなっています。

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