IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.131 もくじ

iijnews131

  • ぷろろーぐ「時が消える」
  • Topics IT Topics 2016
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  • 連載
    • 人と空気とインターネット「IoTがもたらす第四次産業革命」
    • Technical Now「サンドボックスが当たり前になる日」
    • インターネット・トリビア「画像・動画フォーマットと特許」 ※この記事で掲載
    • グローバル・トレンド「日米の商談スタイル」

インターネット・トリビア: 画像・動画フォーマットと特許

インターネットでは大量の画像や音声・動画が扱われています。これらは一定の規格に沿った方法で記録されています。WEB ページの制作に関わった方なら、JPEG や GIF、PNG という規格名に聞き覚えがあるでしょう。動画では MPEG や H.264 という規格がよく知られています。

これらの規格、ファイルフォーマットには大きな目的が二つあります。一つは、規格をきちんと定めることで、異なるソフトウェアのあいだでも正しく画像などを扱えるようにすること。規格に則っているからこそ、画像制作ソフトで保存した画像をブラウザなどで表示できます。

もう一つの目的は、データ量を削減するための「圧縮」です。インターネットでデータをやり取りする際には、同じ画像であればデータ量が少ない方が画面表示速度の向上や通信回線の節約といった点で好都合です。「圧縮」は数学的な手法を用いることで、画像のなかの冗長な部分を削り、データ量を小さくする手法です。圧縮には様々な手法がありますが、もとの情報を欠落させずにデータ格納の効率を高めることでデータ量を小さくする「可逆圧縮」と、画像や動画で人間の目が気づきにくい部分の情報を省略することでデータ量を小さくする「不可逆圧縮」があります。特にデータ量が多くなりがちな動画では、不可逆圧縮が欠かせません。

こうした圧縮には様々なアイデアが投入されており、特許を取得しているものも少なくありません。このため、ファイルフォーマットの利用時に特許に絡んだ問題がしばしば発生します。その一つが GIF にまつわる問題です。画像フォーマットの GIF は1980年代末期に考案され、90年代中頃にはインターネット上で利用される主要な画像ファイルのフォーマットとして広く使われるようになり、対応するソフトウェアも数多く制作されました。

ところが、GIF で使われている圧縮の手法には、あるメーカが考案した特許が使われていました。当初、そのメーカは、インターネットで使われている無料のソフトウェアについては特許使用料を請求しない方針でしたが、96年頃にそれを転換し、使用料を請求するようになりました。そのため、各種ソフトウェアが GIF への対応を取りやめたり、そもそもインターネット上で GIF の利用を避けるといった大きな騒ぎになりました。なお、この特許は2003年(日本では2004年)に失効したため、現在は GIF の利用で特許使用料を請求されることはありません。

圧縮手法が高度になればなるほど、そこに含まれる特許の数も多くなります。最近では、ファイルフォーマットに含まれる特許の数が数百件に及ぶこともあります。よって、ソフトウェアの開発者や利用者が個別に特許権者と契約を結ぶことは困難であり、権利者が許諾方針を変更するようなリスクも高くなります。

そこで、最近定められたファイルフォーマットにおいては、パテントプールと呼ばれる団体が各特許権者から委託を受け、一括して利用権の処理を行なうことが多くなってきました。こうした枠組みが整備されることで、使用料の支払いが簡単になるだけでなく、許諾方針の変更に関するリスクも緩和されます。

また、特定の企業が関連する特許を買い取ったり、権利者への支払いを肩代わりすることで、開発者や利用者から特許利用料を徴収しない「ロイヤリティフリー」を宣言するファイルフォーマットもあります。使用料の支払いが不要になることで、単なるコストダウンだけでなく、関連ソフトウェアの開発・配布手続きが容易になるといった大きなメリットも生じます。

毎年のように様々なファイルフォーマットが提案されていますが、こうした点からフォーマットの戦略を見てみるのも興味深いでしょう。

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