IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.151 もくじ

iijnews151

  • ぷろろーぐ「ささやかな忠告」 鈴木 幸一
  • 特別対談 人となり
    作家 塩野七生 氏
    IIJ 代表取締役社長 勝 栄二郎
  • Topics インターネットは平成を超えて
    • インターネットは平成を超えて
    • インターネットで変わった生活・社会
    • インターネットバックボーンの変遷
    • 変貌・進化するデータセンター
    • インターネットの番号資源管理
    • 平成のネットワーク社会を振り返る
  • 人と空気とインターネット: インターネット30年によせて (浅羽 登志也)
  • インターネット・トリビア: WEBが生まれて30年 (堂前 清隆) ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド: タイでの健康管理

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: Webが生まれて30年

インターネットの用途のなかでもっとも多く利用されているのがWWWでしょう。日本でインターネットの爆発的な普及が始まったのは一九九六年頃と言われていますが、WWWが提案されたのはそれより前の1989年3月12日とされています。先日、WWWが30周年を迎えたということで、技術系のニュースサイトなどで話題になりました。

WWWは従来の技術と比べて何が異なっていたのでしょうか。実は、WWWのもとになった考え方は1960年代から存在していました。「ハイパーテキスト」と呼ばれるシステムで、複数の文章を関連付け、ある文章の一部分を参照中に、そこに指定された別の文章を即座に参照できるというものです。この関連付けを「ハイパーリンク」と呼びます。ハイパーテキストにもとづくシステムのなかには、単純な文章だけでなく、画像や音声・動画を含むコンテンツを閲覧可能にしたものもありました。なかでも有名なのが、一九八七年にApple ComputerがMacintosh向けに提供したソフトウェア「Hyper Card」です。同じ頃に市販された、CD-ROMを用いた初期の電子書籍にも類似の仕組みを持つものがありました。

それまでのハイパーテキストとWWWの最大の違いは、関連するコンテンツが一つのコンピュータのなかにとどまっているか、インターネットを介して複数のコンピュータに分散しているかという点です。ハイパーテキストを使ったコンテンツの多くはCD-ROMなどで供給され、パソコンや専用機器で再生されていました。このため、ハイパーリンクでたどり着ける範囲は、パソコンにセットされたCD-ROM内のコンテンツに限られます。それに対しWWWは、ハイパーリンクを通してインターネットに広がるあらゆるコンテンツにたどり着ける可能性があります。

これは、単にたどり着けるコンテンツの量が多いというだけではありません。CD-ROMで供給されるコンテンツは、CD-ROMの制作者という特定の人・組織によって管理されるものですが、インターネット上のコンテンツは、コンテンツが配置された各コンピュータの管理者がそれぞれ公開しているもので、特定の人・組織によって全体が管理されているわけではありません。

不特定多数の人・組織がコンテンツを管理し、それが互いにリンクを張り合うことで成長したのが、現在のWWWです。それはまさに、全世界規模で張り巡らされた蜘蛛の巣(World Wide Web)と呼ぶにふさわしく、WWWの考案者であるティム・バーナーズ=リーの命名の妙を感じます。

このように全体が管理されないことは、WWWの成長に大きなメリットをもたらした一方、いくつかのデメリットも生みだしました。最大のデメリットは、WWW上に存在する特定のコンテンツを検索することが困難である、ということでしょう。コンテンツが配置されたコンピュータの数が有限であれば、たとえそれがどれだけ大量だったとしても、十分な時間があれば全てを検索することは可能です。ところがWWWでは、コンテンツが配置されたコンピュータがどこにどれだけあるのかを管理している人や組織がなく、その数は常に増減しているため、検索対象となる「WWW全体」がどれだけのものなのか、計り知ることができないのです。

初期のWWWでは、情報の検索を人手に頼っていました。有識者がインターネット上の有用なコンテンツの一覧を作成する「リンク集」や、それを大型化した「ディレクトリサービス」などがあり、変わり種としては、リンク集を書籍にした「インターネット電話帳」のようなものもありました。規模や表現形態は違っていましたが、これらはコンテンツの収集と分類を人手に頼っており、すぐに限界に達しました。

1995年頃になると、WWW上を自動的に探索し、機械的に情報を整理する「ロボット型検索エンジン」が考案され、さまざまな実験が始まりました。そして、コンピュータの性能向上による探索ロボットの飛躍的な進化や、収集された情報を整理し、ランク付けするための画期的なアイデアなどによってこの手法は大きく発展し、今日では Google のように、まるで全世界のコンテンツを検索できるかのようなサービスまで登場しています。

しかし、こういったロボット型検索エンジンが「WWW全体」を網羅しているかというと、Noと言わざるを得ません。30年前に始まったWWWは、今でも絶えず成長・変化し続け、その全貌は誰も把握できていないということを、忘れないようにしなければならないでしょう。

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