IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます。
IIJ.news vol.130 もくじ
- ぷろろーぐ「神無月」
- [特別対談] 人となり
株式会社読売新聞グループ本社 代表取締役会長・主筆 渡辺 恒雄氏
IIJ代表取締役社長 勝 栄二郎- Topics クラウドネイティブ時代へ
- クラウドネイティブを実現するキー・コンセプト One Cloudに込めたIIJのメッセージ
- “使い分け”から”One Cloud”へ IIJ GIOインフラストラクチャーP2
- One Cloud を実現するネットワークサービス IIJ Omnibusサービス
- 情報システム部門の役割変化~プライベートクラウドの価値向上を目指して
- SDNとNFVによるネットワークのクラウド化
- 連載
- 人と空気とインターネット「ささやかな抵抗」
- インターネット・トリビア「電波と法律」 ※この記事で掲載
- グローバル・トレンド「コンテナの確認作業」
インターネット・トリビア: 電波と法律
家電量販店などで販売される SIM フリースマートフォンが増えています。こういったスマートフォンの多くは、日本の国内だけをターゲットにして開発されたものではなく、世界中で販売されることを前提にした「ワールドモデル」に日本用の微調整を加えたものです。現在、日本で利用されている 3G・4G の通信サービスは、国際的な団体によって策定された通信規格に沿って提供されているため、このようなことが可能になっています。
それでは、日本国内で販売されているものではない、海外で販売されている SIM フリースマートフォンを購入し、日本に持ち込んで通信サービスを利用できるのでしょうか?技術的には多くのスマートフォンが日本国内でも通信を行なうことが可能だと思われます。しかし実際には、法律の制約により海外のスマートフォンを日本国内で通信に利用すると「違法」になってしまうケースが少なくありません。
スマートフォンは電波を送受信することで通信を行ないます。電波法では、電波を送信する設備は「無線局」として扱われ、「免許を受けること」が求められています。送信する電波が極端に微弱で他の機器に影響を与える可能性が小さい場合は免許を受けなくても利用できますが、スマートフォンが発信する電波は十分に強いため、これには該当しません。法律上、スマートフォンは利用者に代わって通信事業者が包括的な免許を受け、通信サービスを提供しています。こうした特例的な扱いを受けるために、スマートフォンは電波の送信について一定の基準を満たしているという認定を受ける必要があります。これが「技術基準適合証明」および「工事設計認証」と言われる仕組みで、通称「技適」(ぎてき)と呼ばれ、認定を受けた機器には外装や液晶画面にマークが表示されています。
日本の携帯電話網を合法的に利用するためには、技適マークが表示された端末が必須です。日本で販売されている SIM フリースマートフォンは、メーカや代理店が認定を受け、技適マークを表示しています。しかし、海外で販売されているスマートフォンにはこの認定を受けていないものがあり、そのような端末を日本国内に持ち込んで使用すると、電波法違反になる可能性があります。
海外で販売されている多種多様なスマートフォンを日本で利用できないことに不満を持ち、日本の制度と他国の同様の制度を共通化すべきだという主張もあります。しかし、電波の利用状況は歴史的経緯から国毎に異なりますし、影響の度合いも地理的な条件によって大きく左右されます。他国で認められている電波の使い方でも日本では他の電波利用者に影響をおよぼす可能性があり、制度を共通化することは容易ではありません。
とはいえ、海外との交流が増えている昨今、現在の状況がいささか使いにくいことは、政府も認識しています。そこで、他の電波利用者に与える影響が限られていると判断されるケースについては、技適制度が一部緩和されました。海外に在住する人が一時的に日本を訪問する場合に限り、技適を受けていないスマートフォンでも日本国内の SIM カードと組み合わせて利用することを認めるといった施策もそのひとつです。
なお、技適制度は携帯電話網に限った制度ではありません。例えば、無線 LAN の機器も技適制度の適用を受けていますし、意外なところでは最近流行の「自撮り棒」についているワイヤレスリモコンもこの制度に該当します。ですから、携帯電話の端末同様、技適マークがついていないワイヤレスリモコン付き自撮り棒を使うと、電波法違反になる可能性があります。