IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.161 もくじ

iijnews161

  • ぷろろーぐ「昼寝と意志」 鈴木 幸一
  • 特別鼎談 記憶のなかの音楽 音楽祭とともに歩む
    ・元文部事務次官、元ユネスコ日本政府代表部特命全権大使、元東京国立博物館館長 佐藤禎一氏
    ・東京大学名誉教授、元文化庁長官、元国立西洋美術館館長 青柳正規氏
    ・IIJ 代表取締役会長、東京・春・音楽祭実行委員会 実行委員長 鈴木幸一
  • IT Topics 2021
    • Topic 01 インターネットのこと ちょっと先の未来のこと
    • Topic 02 デジタル通貨
    • Topic 03 クラウド
    • Topic 04 ネットワーク
    • Topic 05 データセンター
    • Topic 06 セキュリティ
    • Topic 07 個人データ保護
    • Topic 08 ヘルスケア
    • Topic 09 コンテンツ配信
    • Topic 10 DX推進
    • Topic 11 モバイル
    • Topic 12 IoT
  • IIJ Research となりの情シス
    • 仮想デスクトップ利用・検討状況の実態調査
  • 人と空気とインターネット: 目に見えないもの
  • インターネット・トリビア: 一度登録したドメイン名は大切に ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド: ニューヨークでの新生活

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: 一度登録したドメイン名は大切に

WEBサイトやメールアドレスのアドレスに含まれるドメイン名は、インターネット上で企業やサービスを示すアイデンティティとして機能しています。ところが、ドメイン名の扱いを誤ったがために、そのアイデンティティを第三者に悪用されてしまうケースがあります。今回はキャンペーンサイトなどで問題になる「ドロップキャッチ」について紹介します。

サービスや企業がメインで使うドメイン名は、一度登録するとそのまま長年使い続けるのが通常です。ですが、期間限定のキャンペーンなどで、そのためだけに新しいドメイン名を利用することがあります。例えば、もとのドメイン名が「○○○.jp」で、キャンペーン用に「○○○-campaign.jp」のようなドメイン名を利用するケースです。新しいドメイン名を利用する理由はいろいろ考えられますが、キャンペーンの運営を広告代理店など外部に委託するためというケースが多いようです。キャンペーン用のWEBサイトの管理を代理店に任せ、代理店がWEBサイトの制作とドメイン名の登録までを請け負うという契約にしているのです。

キャンペーン用に登録されたドメイン名でも、正しく管理が続けられていれば、問題はありません。しかし、登録したドメイン名をその後どう扱うのか決めておらず、何も手が打たれないまま登録期限が満了して失効してしまうと、トラブルにつながることがあります。

失効したドメイン名は一定期間、保留されたのち、第三者が誰でも登録できる状態になります。そういったドメイン名を狙って登録し、自分のものにしてしまう人がいます。これを「ドロップキャッチ」と呼びます。

なぜドロップキャッチが行なわれるのかというと、ある程度使われたドメイン名は、他の WEBサイトからのリンクがあったり、検索エンジンの巡回対象になっているなど、「評価」が高くなっているためです。そのため、ドロップキャッチされたドメイン名は、しばしばもとのWEBサイトとはまったく関係のないコンテンツ、例えば、成人向けサイトや首をかしげたくなるような商品の販売などに使われることもあります。

そういった怪しげなコンテンツが自社のブランドを冠したドメイン名で扱われるのは好ましくないですが、さらに困ったことに発展する可能性もあります。それは、ドロップキャッチした人がもとのコンテンツとそっくりなコンテンツを運用し始めた場合です。

一般の訪問者からすると、もとのサイトと似たようなコンテンツが掲載されていれば、いつの間にかサイトの運営者がすり替わっていることに気づくのはむずかしいでしょう。そして、もとのサイトが運営していると思い込み、信頼してサイト内を閲覧するでしょう。そこに少しだけ偽の情報が紛れ込まされていたら……例えば、お金の振込先の口座だけを別にすげ替えたページが紛れ込まされていたら、大変なことになってしまいます。

もちろん、悪意ある第三者がターゲットのサイトを模したドメイン名を新規に取得するという攻撃方法もあり得ます。しかし、こうした新規のドメイン名は外見を模していても、他のサイトからのリンクなどの評価がありません。それと比べると、ドロップキャッチで手に入れたドメイン名は、キャンペーンなどでもとのサイト運営者が大々的に広報しており、場合によっては他のサイトからもリンクされるなど、非常に高い評価を持っています。このようなドメイン名が悪用されると、リテラシーの高い人でも騙されかねません。また、特に悪質な人物であれば、悪用をちらつかせながら、ドメイン名の買い取りといったかたちで金銭を要求してくる可能性も考えられます。

こうしたトラブルに遭わないためには、一度登録したドメイン名は失効しないように管理する。もっと言うと、安易に新しいドメイン名を登録せず、すでに利用しているドメイン名を活用することが重要でしょう。アイデンティティを守るためには隙を作らないようにすることが大切です。