IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます。
IIJ.news vol.128 もくじ
- ぷろろーぐ「20年」
- [特別対談] 人となり
キヤノン 代表取締役会長兼社長 CEO 御手洗 冨士夫氏
IIJ 代表取締役社長 勝 栄二郎- Topics コンテンツ配信 ~IIJの新たな挑戦
- コンテンツ配信をめぐる最新技術動向
- IIJのコンテンツ配信
- [座談会] ハイレゾ音源をライブ・ストリーミング配信する!
- IIJの社内向けコンテンツ配信
- デジタルコンテンツの保護
- 連載
- 人と空気とインターネット「物流のインターネット化」」
- Technical now「マルチキャリア化したIIJのモバイルサービス」
- インターネット・トリビア「半導体ストレージ」 ※この記事で掲載
- グローバル・トレンド「張江男」
インターネット・トリビア「半導体ストレージ」
今回は、インターネット上のサーバで使われるストレージ(記録装置)について書いてみたいと思います。
サーバに限らず、デスクトップパソコンやノートパソコンで一般的なストレージは、ハードディスク(HDD=ハードディスクドライブ)です。HDD は箱のなかに回転する円盤が格納されており、その円盤に磁気を使って情報を記録します。
最近、急速に普及しているのが、HDD の代わりに使える半導体ストレージ(SSD=ソリッドステートドライブ)です。SSD では円盤の代わりに半導体メモリチップに情報を記録します。SSD に使われる半導体メモリは Flash ROM と呼ばれ、電源を切っても情報が消えることはありません。原理は USB メモリと同様ですが、HDD の代わりとして使えるよう、USB メモリよりも高速・大容量になっています。
SSD をサーバで利用する最大のメリットは、高速性です。なかでも「ランダムアクセス性能」がもっとも期待されています。コンピュータがストレージにアクセスする方法は、ファイルを先頭から順番に読み書きする「シーケンシャルアクセス」と、バラバラにアクセスする「ランダムアクセス」に大別されます。HDD でランダムアクセスするときは、円盤上で磁気を読み書きする「ヘッド」と呼ばれる装置があちこち動くため、極端に速度が落ちます。一方、そのような装置がない SSD は、ランダムアクセスになっても速度が落ちにくいのです。サーバでは同時に複数のクライアントとアクセスを行なうことが多く、激しいランダムアクセスが発生します。SSD はそうした環境に最適なのです。
多くの SSD は外観も HDD に合わせて作られています。そのため、パソコンの HDD を取り外して SSD に交換することも容易です。サーバで利用する場合も、HDD の代わりに同じ場所に SSD を取り付けることもあります。
大規模なシステムでは、複数の HDD を組み合わせたディスクアレイを使用することがあります。このディスクアレイに搭載されている HDD を、全て SSD に置き換えたり、HDD と SSD を混在させる利用方法もあります。HDD・SSD 混在に対応したディスクアレイでは、コントローラがファイルへのアクセス状況を調べ、頻繁にアクセスされるファイルだけを自動的に SSD に配置するようなものもあります。SSD は性能が高い代わりに、HDD よりも容量あたりの単価が高いため、両方を混在させることで容量とコストのバランスを取ることができます。
また、サーバの筐体内に取り付ける拡張カードの形状をした SSD も販売されています。HDD を取り付けるインタフェースではなく、拡張カードを取り付けるインタフェースを使って通信し、サーバの CPU からダイレクトにアクセスするため、さらに高速アクセスが可能です。こうした SSD は、きわめて負荷の高いデータベースのサーバなどに使われています。
クラウドサービスで提供される仮想サーバのなかにも SSD を利用したものがあります。クラウドでは、同一のストレージを共有する仮想サーバが激しいランダムアクセスを発生させるため、SSD の性能を有効に活用できます。ただし、仮想化のためのオーバーヘッドが発生するので、物理サーバに SSD を取り付けたもののような性能は出ません。より高い性能が必要な場合は、拡張カードタイプの SSD を取り付けた物理サーバを選択すると良いでしょう。クラウドのなかには、このようなサーバを月額で提供しているサービスもあります。高い性能のサーバを低い初期投資で利用できるため、コストパフォーマンスも優れています。