IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.newsで連載しているコラム「インターネット・トリビア」と連動しています。
コラムの前半部分はIIJ.news vol.115(PDFで公開中)でご覧下さい。
コラムの前半では、インターネットで起こる「遅延」の原因について紹介しました。そこで書いた通り、通信相手が物理的に遠隔地にある場合は、その距離が原因となって避けようのない遅延が発生してしまいます。しかし、だからといって不便な状態を甘受するだけでは進歩がありません。大きな遅延のなか、その影響を廃して快適なインターネットを実現するために、様々な技術開発が行われてきました。
今回はそのなかから二つの技術を紹介してみたいと思います。
コンテンツを近くまで持って行く (CDN)
「距離が遠いと遅延が大きい」ならば、距離を縮めてしまえというアプローチです。
大量のアクセスがあるWebサイトや動画の配信などでは、CDNと呼ばれるサービスを使うことがあります。CDNには多数のWebサーバ(キャッシュサーバ)が設置されており、本物のWebサーバに変わってキャッシュサーバから画像や動画のコンテンツを配信することで、大量のアクセスに応えます。
このCDNの中には、コンテンツ配信用のキャッシュサーバが世界中に分散配置されているものがあります。閲覧者がWebサイトにアクセスしようとすると、閲覧者が居る場所に「近い」キャッシュサーバに誘導され、コンテンツはそのキャッシュサーバから送り返されます。こうすることで、「距離による遅延」の影響を回避しています。
ただし、CDNが有効に機能するのは、何度も参照される画像のような「固定的なコンテンツ」に限られます。たとえば、データベースと連動して表示する度に内容が変化するようなコンテンツではCDNは有効に機能しません。
通信手順を効率化する (SPDY)
一方、距離を近くするのではなく、通信の手順を最適化することで遅延の影響を受けにくくする、というアプローチも考えられます。このアプローチの中でも最近話題なのが、Googleが推進しているSPDY1です。
WWWに使われているHTTPというプロトコル(通信手順)はインターネット普及期からずっと使われている伝統あるプロトコルです。ところが、今のインターネットの視点から見ると、必ずしも高速化に適した設計にはなっていません。そこで、最近のWWWの使われ方を考慮したうえでHTTPを再設計したのが、SPDYです。SPDYでは複数のデータのやりとりを並行して行うなど、ネットワークの遅延が大きくても画面表示が遅くなりにくい仕組みを備えています。
SPDYはまだ実験中で、広くインターネットで使われているわけではありません。ですが、現在、SPDYの仕様を元に、次世代のHTTPである「HTTP2.0」の規格化が検討されており、今後の普及が期待されています。
- 「スピーディー」と読むそうです。 [↩]