10月に発売されたGoogle社Pixel 4シリーズに関連して、今年7月にβサービスを開始したIIJmioのeSIMに改めてご注目をいただいているようです。IIJでは継続的にeSIMに関する調査を行っていますが、いくつか気になる挙動が見かけられましたのでお知らせいたします。

ご紹介する情報は記事執筆時点でのものです。IIJで実施できる調査手法は限られており、製品のすべての挙動を把握できているわけではありません。調査に利用する端末の数も限られているため、特定個体の不具合である可能性もあります。また、調査後に各社の製品で行われたアップデートにより挙動が変わることがあります。あらかじめご了承下さい。

Google Pixel 4・Pixel 4 XL

Pixel 4・Pixel 4 XL(以下Pixel 4)は、Googleが販売するAndroidスマートフォンです。プラスチック製のSIMカード以外に、eSIMを利用することができます。SIMカード・eSIMを同時に使用することも可能で、その場合音声通話・SMSやデータ通信をそれぞれのSIMで使い分けることができます。

IIJmioではPixel 4を販売していません。Google ストアからSIMフリー版のPixel 4を購入することができます。Pixel 4はSoftBank社からも発売されていますが、SIMロックがかかっておりそのままでは他社の契約(SIM)で利用することはできません。SIMロックを解除すればSIMフリー版と同様に利用できると思われますが、IIJでは確認していません。

Pixel 4でのeSIMの利用について

Pixel 4と以下のSIMの組み合わせについて、動作を確認しています。

SIMカード 状況
IIJmio タイプD 利用に支障なし
IIJmio タイプA 利用に支障なし (APN手動設定必要)
IIJmio eSIM 利用に支障なし ※データ通信のみ
IIJmio タイプD + IIJmio eSIM タイプD SIMで通話・eSIMでデータ通信利用可能。設定によってはアンテナピクトに×印が表示される。
IIJmio タイプA + IIJmio eSIM タイプA SIMで通話・eSIMでデータ通信利用可能。設定によってはアンテナピクトに×印が表示される。
docomo SIM + IIJmio eSIM docomo SIMで通話・eSIMでデータ通信利用可能。設定によってはアンテナピクトに×印が表示される。通話時はデータ通信不可能
au SIM (VoLTE) + IIJmio eSIM au SIMで通話・eSIMでデータ通信利用可能。設定によってはアンテナピクトに×印が表示される。通話時はデータ通信不可能

これ以外のSIMの組み合わせについても動作する可能性がありますが、IIJでは確認作業を行っていません。

以下、注意が必要なパターンについて記載いたします。

タイプD SIM・タイプA SIMと、eSIMの組み合わせについて

SIMカードスロットにタイプD SIM、もしくはタイプA SIMを取り付け、eSIMも併用するパターンです。タイプD・タイプA側を「デフォルトの通話とSMS」、eSIM側を「モバイルデータ通信」に設定した場合、両方のSIMを利用することができます。このときデータ通信はeSIMで行われます。

Pixel 4 アンテナピクト
Pixel 4 アンテナピクト
「通話時のみデータ」
「通話時のみデータ」

アンテナピクトは二つ表示されますが、標準状態ではSIMスロット側のアンテナピクトに×印が表示されます。SIMスロット側のSIMの設定画面より「通話時のみデータ」を有効にすると、×印が消えます。この設定を行うと、通話中のデータ通信はSIMスロット側のSIMで行われます。

docomo SIM・au SIMと、eSIMの組み合わせについて

SIMカードスロットにdocomo SIM、もしくはau SIMを取り付け、eSIMも併用するパターンです。このパターンでも端末の挙動はタイプD SIM・タイプA SIMと併用した場合と同様です。

標準状態ではSIMスロット側のアンテナピクトに×印が表示されます。docomo SIMについては、SIMスロット側の設定で「通話時のみデータ」を有効にすると×印が消えます。au SIMでは×印が消えませんが、通話を開始すると×印が消えます。

docomo SIM、au SIMいずれについても、docomo SIM、au SIMの場合はこの設定を有効にしても通話中のデータ通信が行えません

端末初期化時のeSIMについて

eSIM消去
eSIM消去

Pixel 4 (Android)では、設定の初期化(リセット オプション)を実行する際に、チェックボックスで「ダウンロード型SIMの消去」を選択することができます。このチェックボックスを有効にして設定のリセットを実行すると、eSIMは削除されます。eSIMを削除したあと改めてeSIMのセットアップを行う場合は、IIJmioのホームページよりeSIMの再発行が必要になります。(再発行手数料が必要になります)チェックボックスを無効にして設定のリセットを実行する場合eSIMは消去されず、リセット後に再利用できます。

少し詳しい話 (Dual SIMスマートフォンの挙動について)

DSDS・DSDV・DSDA

現在市場に出回っているスマートフォンの中には、eSIMを搭載したスマートフォンだけでなく、SIMスロットが二つある機種もあります。こうした「Dual SIM」のスマートフォンであれば、docomo・au・SoftBank等のSIMカードとIIJmioのSIMカードを取り付けることでPixel 4同様に複数のSIMを同時利用することができます。ただ、これらのDual SIMスマートフォンの中にはいくつか異なる挙動の機種が混在しています。

こうしたスマートフォンの挙動については「DSDS」や「DSDV」といった名前で分類されることがあります。といっても、DSDSやDSDVがそれぞれどのように動作すべきかきっちり決められているわけではなく、同じ分類名であってもメーカーや機種によって異なる挙動をする場合もあります。今回は一つの整理として、以下のようにまとめてみました。

DualSIMの分類
DualSIMの分類

最近よく出回っているDual SIMのスマートフォンは、基本的に「DSDS」のスマートフォンです。このタイプのスマートフォンは二つのSIMスロット(もしくは、一つのSIMスロットとeSIM)の組み合わせで、両方のSIMで音声通話・SMSとデータ通信を使い分けることができます。以前はDSDSと言っても、LTEで通信できるのが片方のSIMのみという制限が付いた機種が多かったのですが、最近は両方のSIMでLTEを使うことができる機種も増えており、これを特に「DSDV」と呼ぶことがあります。

DSDV(DSDS)の特長は、通話が始まるとデータ通信用のSIMが利用不可能になることです。これは、スマートフォンに無線機・通信モデムが1セットしか搭載されていないことが原因です。これらのスマートフォンは通話中に次のどちらかの動作をします。

DSDV通話時の挙動
DSDV通話時の挙動

「音声通話用SIMデータ通信」を行う場合、スマートフォンの内部では一度データ通信が切断され、再接続が行われます。多くのケースでは気にならないと思いますが、アプリによっては再接続時に通信エラーが起こることがあるかもしれません。また、通話中には音声通話SIMの契約でデータ通信が行われるため、契約内容によっては別途パケット代が必要になる場合もあります。

「データ通信停止」の場合、通話中はデータ通信ができないので、例えば通話しながらSNSの更新情報を確認するといったことはできません。

DSDSの挙動についての詳しいことは、IIJmio meeting 17のテクニカルトーク「DSDSと着信シーケンスについて」でも取り上げています。

Pixel 4の挙動

今回の記事で取り上げているPixel 4は、SIMスロットとeSIMを組み合わせている場合DSDV的な動作をします。前半の動作確認のところで「通話時のみデータ」という設定項目を紹介しましたが、この設定が有効になっている場合、通話を開始すると「音声通話SIMでデータ通信」の挙動となり、設定が無効になっている場合は「データ通信停止」の動作をするようです。

実際にIIJmio タイプDのSIMとeSIMを取り付けて「通話時のみデータ」の状態で通話をしてみると、このような挙動が確認できます。

ところが、SIMスロットにdocomo SIMやau SIMを取り付けて、IIJmioのeSIMと併用した場合「通話時のみデータ」を設定した場合でも、通話用SIMでのデータ接続に失敗するようです。このため、docomo SIM・au SIMとIIJmio eSIMと組み合わせた場合は、通話中にデータ通信ができなくなっています。この挙動が仕様通りなのか、意図しないものなのかはわかりません。SIMカードの設定を変更したり、VoLTEをOFFにしても状況は変わりませんでした。

Pixel 4でSIMスロットとeSIMの組み合わせを考えている方の多くは、docomo・auなどキャリアのSIMとIIJmioのeSIMの組み合わせを考えていらっしゃるかと思います。この場合通話中のデータ通信ができないことに注意いただければと思います。今後この挙動が修正されるのかは継続的に観察したいと思います。


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