ついに家庭用ブロードバンド回線でもIPv6が一般化?
すでに報道で明らかになっていますが、昨日2011年6月1日からNTT東西のフレッツ光ネクストサービスで、IPv6「トンネル方式」1の提供が開始されています。ブロードバンドサービスで大きなシェアを占めているフレッツシリーズでは今までIPv6でのインターネット接続の利用が難しく、家庭でのIPv6普及のネックになっていました。しかし、このサービスの開始で、ついに家庭でもIPv6の利用が簡単になると期待されています。
でもこれ、フレッツ光ネクスト2だけなんですよね!
まだまだ利用者も多いフレッツ・ADSLには対応していませんし、また、光ファイバーを使ったフレッツでも従来型のBフレッツでは利用できません。最近新規に光ファイバーのフレッツを引き込んだ場合は、光ネクストが導入されていることが多いと思いますが、マンションなど、一括して共用部分に設備が導入されている場合は新しいフレッツを引き込み直すことも簡単ではなく、悔しい思いをされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、IIJでは、フレッツ光ネクストのIPv6接続サービス(トンネル方式)に対応するのはもちろんのこと、それ以外のすべてのフレッツ回線をご利用の方に向けたIPv6接続サービスをご用意いたしました。
IPv6仮想アクセス(ネットワーク型)
IIJが2011年6月6日からサービスを開始するIPv6仮想アクセス(ネットワーク型)は、主にフレッツ光ネクスト以外のフレッツ回線をご利用の方に向けたサービスです。従来型のフレッツサービスでもIIJが提供するトンネルルータを利用することで、IPv6を自宅に導入する事ができるようになります。
以前、IIJの提供しているIPv6仮想アクセスを家庭内LANで利用する方法をご紹介したことがありますが、この記事は元々1台の端末で利用するサービスをLANで使おうとしていたもので、少々無理矢理感があるものでした。今回提供開始する「IPv6仮想アクセス(ネットワーク型)」3では、フレッツ光ネクストで利用できるIPv6サービスとほぼ同じ機能を提供しており、素直なIPv6環境を利用することができます。
さて、ここで、IPv6仮想アクセス(ネットワーク型)とフレッツ光ネクストのIPv6接続サービス(トンネル方式)の違いを見てみましょう。4
図(右)のように、フレッツ光ネクストのIPv6接続(トンネル方式)では、IPv4とIPv6が独立して利用できるようになっており、それぞれがPPPoEという「トンネル」を経由して提供されます。一方、IPv6仮想アクセスでは図(左)のように、まず、IPv4の接続が行われた上で、IPv4の通信を使ってIPv6の通信を中継すると言うことを行っています。このための設備はNTTのフレッツ網の中ではなくIIJのネットワーク内に設置されています。同じような「トンネル」を利用していますが、IPv6のトンネルの接続先と、プロトコルが違います。
フレッツ光ネクスト IPv6接続 (トンネル方式) |
IPv6仮想アクセス (ネットワーク型) |
|
---|---|---|
追加料金5 | なし | なし |
配布されるIPアドレス | /56 | /56 |
IPアドレスの割り当て方式 | 半固定的 | 半固定的 |
対応するフレッツサービス | フレッツ光ネクスト | フレッツISDN フレッツ・ADSL Bフレッツ フレッツ・光プレミアム フレッツ光ネクスト フレッツ光ライト |
トンネル接続先 | フレッツ網内終端装置 | IIJ網内終端装置 |
トンネル方式 | PPPoE | L2TP |
フレッツPPPoEセッションの消費 | 1セッション消費する | 消費しない |
接続用機器 | IPv6トンネル対応アダプタ その他、対応ルータなど SEIL |
L2TP/IPv6対応機器 SEIL |
また、フレッツ光ネクストのIPv6接続では、PPPoEセッションを消費しますが、IPv6仮想アクセスではPPPoEセッションを消費しないというのも一つの注目です。フレッツの多くの品目ではPPPoEを2セッションまで接続する事ができますが6自宅サーバ用など、IPv4のPPPoE接続をすでに2セッション使っている場合、IPv6の為のPPPoEセッションを利用できない場合がありますが、IPv6仮想アクセスではそのような制限はありません。
ISPとの契約
さて、フレッツ光ネクストの IPv6接続(トンネル方式)を使う場合でも、IPv6仮想アクセス(ネットワーク型)を使う場合でも、IIJとISPの契約をして頂かなければなりません。すでにIIJ4UやIIJmioのフレッツ接続サービスを利用している場合はそれがそのまま使えますが、契約がない方はIIJ4U、IIJmioのメニューの中からご利用のフレッツ回線に対応するサービスをご契約下さい。(IPv6仮想アクセスはどの品目でも利用できます)
いろいろな品目があってごちゃっとしていますが、ほとんどの場合以下の条件に当てはまると思います。
- メールやホームページスペースは不要 (今のがあるからいい)
- 家庭用のフレッツ回線(ファミリータイプ・マンションタイプ)
- IPv4アドレスは固定割り当てでなくても良い
ということで、IIJmio FiberAccess/DF(2100円/月)を契約しておきましょう!
ちなみに、IPv6仮想アクセスはIIJのフレッツ系サービスだけでなく、すべての接続系アカウントで提供されています。ということは、IIJmio モバイルアクセス/無線LAN(最低料金315円/月7)を契約するだけで……おや、誰か来たよせdrftgyふじこ
接続設定
さて、ISPの契約が決まれば、あとは機器の設定です。
ここから、フレッツ光ネクストを使う場合と、IPv6仮想アクセス(ネットワーク型)で少しだけ方法が違います。
フレッツ光ネクスト(トンネル方式)の場合
すでにフレッツ光ネクストが宅内に導入されている場合、NTTの工事により回線終端装置やVDSLモデム、光電話対応機器(以降、回線終端装置)が設置されていると思いますが、このLANポートに新たに「IPv6トンネル対応アダプタ」を接続します。このアダプタは今後複数のメーカーから発売されると思われますが、現時点ではNTT東西から購入するしかありません。NTT東日本・NTT西日本
が、とりあえず今すぐ実験したい!という方には、IIJが開発したSEIL/x86が利用できます。社内でちゃんとフレッツ光ネクストとの接続性を確認していますので、安心して下さい。SEIL/x86はVMwareで動かす仮想ルータとして提供されており、「試すだけなら無料」、「じっくり使う場合でも800円」で導入可能です。8
SEIL/x86での接続方法は、SEILのオンラインコミュニティ「SEIL/SMFコミュニティ」で詳しく公開されていますので、これを参考に設定にチャレンジしてみましょう
その他のフレッツ回線の場合
IPv6仮想アクセス(ネットワーク型)を使う場合の設定ですが、接続にはNTTの販売するアダプタではなくL2TPに対応したルータを利用します。これはインターネットで一般的に利用されているプロトコルですので、CiscoやJuniperのルータでも設定さえすれば繋がるのですが、気軽に導入するのは難しいですよね?ということで、こちらも同じくSEIL/x86を使うのがおすすめです。繰り返しになりますが、「試すだけなら無料」、「じっくり使う場合でも800円」で導入可能です:-)
こちらの設定方法ですが、6月6日のサービス開始に合わせてSEIL/SMFコミュニティで公開されますので、もう少々お待ち下さい。
6/6追記: L2TP IPv6接続の設定に追記されました。こちらをご覧下さい。
半固定的って?
さて、これで皆さんの自宅にもIPv6が届いたかと思いますが、気になっている方もいらっしゃいますのでIPv6アドレスの割り当て方式について補足しておきましょう。
IIJで提供している個人向けのIPv6サービスは、フレッツ光ネクスト(トンネル方式)・仮想IPv6アクセス(ネットワーク型)ともに、完全な固定割り当てではありません。
接続設定を行い、最初にPPPoE/L2TP接続を行った時にIPv6アドレス(プレフィクス)が割り当てられます。その後は、PPPoE/L2TPを再接続しても、基本的に同じアドレスが割り当てられます。ただし、利用者の接続地域が変化したり、IIJの設備の都合で、予告なく割り当てが変化することがある、というのが「半固定」です。IIJとしてはできるだけ割り当てアドレスが変更にならないように配慮は致しますが、変更がないと言うことを保証できないためこのような表現になっています。
ですので、これらの接続でメールサーバなどIPv6対応のサーバを提供するのはあまりおすすめできません。サーバを設置する用途には、法人向けのサービスですが、IIJ IPv6 FiberAccess/Fをご契約頂くと、IPv6アドレス完全固定で運用が可能です。
また、IIJのクラウドサービスIIJ GIOでも手軽にIPv6対応サーバを運用することができるため、こちらも合わせて利用して頂ければいいんじゃないかと思います。
本日の関連サービス
- この記事では従来からの名称で統一していますが、正式名称は「インターネット(IPv6 PPPoE)接続」と呼ぶそうです。 [↩]
- NGN網を利用したフレッツサービス [↩]
- ネットワーク型の提供開始の伴い、従来から提供していたサービスは「IPv6仮想アクセス(端末型)」に名称変更されます [↩]
- フレッツ光ネクストには「ネイティブ方式」という接続形態もあり、今後サービス提供が予定されています。今回の記事ではこちらの紹介は割愛します。 [↩]
- すでにIIJのフレッツ接続サービスを利用している場合、IPv6を利用するために追加で支払う費用 [↩]
- 品目によっては追加料金で拡張可能 [↩]
- BBモバイルポイントのアクセスポイントを一度も使わなければ、支払いは315円/月のみです [↩]
- LaIT(ライト)はIIJが運営する中小法人向けのITサービスですが、個人でも利用可能です [↩]