あまり知られていないことですが、皆さんのお使いのスマートフォンに入っている「SIMカード」には「PINコード(ぴんこーど)」という一種のパスワードを設定することができます。「スマートフォンの安全性を高めるため」という名目で、このPINコードの設定を推奨される方もいらっしゃるのですが、説明不足のために操作を誤り、SIMが使えなくなる(※)というトラブルに発展するケースが多発しています。
この記事では、操作ミスで「SIMがロック」された場合の対処法について説明いたします。また、後半ではそもそもPINとはどのような機能かを紹介します。
※SIMが使えなくなった際の影響
PINコードによるロックはあくまでSIMカードへのロックです。主な影響範囲は、「電話の発着信ができない」「SMSの送受信ができない」「データ通信ができない」の3点です。
PINコードによるロックを解除できなくても、スマートフォン本体は利用できるため「Wi-Fiでの通信」「スマートフォン本体の電話帳の参照」「スマートフォン内の写真などの参照」「スマートフォンのアプリの利用」には影響はありません。
ただし、いくつかの機種ではロックが解除できないSIMが取り付けられていると、スマートフォンの操作がそこで止まってしまうようです。その場合はSIMカードを取り外すことでスマートフォンを操作することができます。
スマートフォン起動時の画面
スマートフォン起動時に次のような画面が表示された場合、SIMに何らかのロックがかかっている可能性があります。むやみに番号を入力すると状況が悪化するため、落ち着いて対応下さい。
※クリックすると画像が拡大されます
(1)PINコード設定済み
SIMカードにPINが設定されており、PINの入力をしないとSIMが利用できない状態です。正しいPINコードを入力するとSIMが利用できるようになります。
PINコードはご自身で設定した4桁から8桁の数字です。
PINコードが分からない場合、「キャンセル」をタップすることでスマートフォンを操作できる場合があります。ただし、その場合は「電話の発着信」「SMSの送受信」「データ通信」は利用できません。(機種によってはキャンセルが効かないことがあります)
PINコードを設定した覚えがない場合「初期設定のPINコード」を試してみてください。初期設定のPINコードを入力してもロックが解除できない場合、残念ですが一度PINロック状態にしてPUKコードを使ってロックを解除する必要があります。(適当な数字を3回入力するとPINロック状態になります)
各社の初期設定のPINコード
- IIJmio (タイプD・タイプA)
- IIJmio (プリペイドパック)
- IIJmio (IIJmio IoT)
- docomo
- au
- UQ mobile
- SoftBank
- Y!mobile
- 楽天モバイル(MNO)
- OCNモバイルONE
- mineo (Aプラン・Dプラン・Sプラン)
※一般的に、MVNOのSIMカードの初期設定のPINコードは提供元キャリアと同一ですが、念のため各社のWebサイトなどで確認して下さい。
(2)PINロック状態
PINコードの入力を3回以上間違えたため、PINロックがかかり、SIMカードが利用できない状態です。PUKコードを入力するとPINロックを解除することができます。
PUKコードが分からない場合、「キャンセル」をタップすることでスマートフォンを操作できる場合があります。ただし、その場合は「電話の発着信」「SMSの送受信」「データ通信」は利用できません。(機種によってはキャンセルが効かないことがあります)
PUKコードの入力を10回失敗すると、SIMカードが無効になります。SIMカードが無効になると、携帯電話会社に連絡してSIMカードを再発行しなければなりません。PUKコードはSIMカードごとに異なります。正しいPUKコードを入手できるまでは、むやみに入力しないようにしてください。
PUKコードとPINコードは異なるコードです。この画面ではPINコードを入力してもロックは解除できません。誤ってPINコードを入力しないように注意して下さい。
各社のPUKコード入手方法
- IIJmio (タイプD・タイプA・プリペイドパック・IIJmio IoT)
- docomo
- au
- UQ mobile
- SoftBank
- Y!mobile
- 楽天モバイル(MNO)
- OCNモバイルONE
- mineo (Aプラン・Dプラン・Sプラン)
※au(KDDI)とそのMVNOではSIMの台紙に「PINロック解除コード」(PUKコード)が記載されています。それ以外の携帯電話会社・MVNOはサポート窓口などで照会する形になっているようです。
(3)SIM無効状態
PUKコードを10回以上間違えて入力たため、SIMが無効になっています。SIMを復活させることはできません。携帯電話会社に連絡し、SIMの再発行を受けて下さい。SIMの再発行は通常手数料が必要になります。
SIMの再発行を受けてもスマートフォン本体の中の電話帳や写真は失われません。おサイフケータイ・NFC対応のサービスについては、再登録が必要になる場合があります。
IIJmioでは、音声通話対応SIMをご利用の場合、SIMの再発行を行っても電話番号は変わりません。SMS対応SIM・データ通信専用SIMについては電話番号が変わります。
携帯電話会社に問い合わせる際には「PINを設定した」「PINロックの解除に失敗した」とお伝えになることをおすすめいたします。似た用語に「SIMロック」「SIMロックの解除」がありますが、こちらは全く異なる手続きです。誤った手続きを行わないようご注意下さい。
PINコードによるSIMのロックとは
「SIMロック」とは異なります
よく言われている「SIMロック」は、スマートフォン本体の利用制限のことを指しています。
携帯電話会社からスマートフォンを購入した際、自社の通信サービス以外でスマートフォンを利用できないような制限がかかっていることとがあります。これが「SIMロック」です。(「他社のSIMを使えないように、スマートフォンにかけられたロック」という意味です)
この制限を解除して、他社の通信サービスを利用できるようにすることを「SIMロック解除」と言います。携帯電話会社の窓口で「SIMロックを解除して欲しい」というと通常こちらが案内されます。
PINコードによるロックはなんのために使うのか
スマートフォンにはパスワードや指紋認証・顔認証の機能があり、第三者がスマートフォンを操作することを防いでいます。これによって、スマートフォン本体のアプリや、写真、電話帳は守られています。
ですが、スマートフォンの中にあるSIMカードを抜き出して他のスマートフォンに取り付けるとSIMカードに関するいくつかの機能が利用できます。SIMにPINコードを設定することで、こうしたリスクを避けることができます。
なお、主要なリスクである通信・通話の不正利用については、スマートフォンの紛失時に携帯電話会社に連絡して回線の停止を行うことでも防止できます。
また、SIMカードの設計時(1990年台)にはSIMカード内に電話帳などを保存することが想定されていましたが、現在通常の操作ではSIMカードに電話帳は保存されないため、こちらについてはそもそもリスクがない(少ない)と考えられます。
なぜPINコードにまつわる問題が多発しているのか
SIMのPINコードはPINの入力に失敗するとあっさりPINロックがかかること、ロック解除に失敗するとあっさりSIMが無効になることなど、かなり安全側(不正利用を防止する)に寄せた設計になっています。
ですが、スマートフォンに用意されているPINコードにまつわる画面は決して親切とは言えず、誤操作を誘発しやすいものになっています。そのため、PINコードを設定しようとして操作を間違えPINロックがかかってしまう方や、PINロックを解除しようとしてSIMが無効になる方がたくさんいらっしゃいます。
たとえばスマートフォン本体のロック機能は、解除不能になるまでのリトライの回数が多めに設定されていたり、入力失敗を繰り返すとリトライまでの間にしばらく待機時間を設けるなど、回復不可能な事態に陥りにくいような仕組みが用意されています。それと比べるとSIMのPINコードの仕組みはかなりあっさりしており、短時間で回復が困難な状態に陥りやすいという印象があります。
現状、日本国内でスマートフォンを使う事を考えると、PINコードを設定する事によるメリットと、誤操作による被害のバランスが悪いため、PINコードではなく「スマートフォン本体のロック」「回線の停止」で不正利用を防止した方が良いと考えています。
PINコードは絶対設定すべきではないのか
あくまでバランスの問題であり、高いリスクを回避するためにPINコードを設定するのは適切な使い方だと考えています。
一つの例として、海外旅行にスマートフォンを持っていって現地で紛失した場合、日本の携帯電話会社に連絡をして回線を停止するのに時間がかかるかもしれません。海外でSIMが不正利用されると、ローミング料金が適用されるため国内と比べて短時間で被害額が大きくなる傾向があります。こうしたリスクが想定される場合は、あらかじめPINコードを設定しておく方が良い場合もあります。
また、スマートフォンやその他の通信端末を非常に機密性の高い業務に利用する際など、操作ミスのリスクを考えてもPINコードを設定した方が良い場合もあります。
こうしたケースでPINコードを設定する場合は、事前にPUKコードを確認しておく、ロックがかかった場合の代わりの通信手段を用意しておくなど、操作ミスでPINロックがかかる可能性を踏まえた上で設定を行うと良いかと思います。