IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます。
IIJ.news vol.124 もくじ
- ぷろろーぐ「卓球台」
- Topics「事業継続を支えるITサービス」
- 企業活動を継続する際のリスクに対し、インターネットとITは何をすべきか
- WEBサイトのBCP対策
- 情報漏えいを防ぐためにソリューションにできること
- 情報通信環境とともに変貌するセキュリティ事情
- 有事に負けないサポートセンター運営
- 連載
- 人と空気とインターネット「自動化・機会化の行く末」
- インターネット・トリビア「JavaScript」 ※この記事で掲載
- グローバル・トレンド「ロンドンのオフィス引っ越し事情」
インターネット・トリビア 「JavaScript」
インターネット上で使われるプログラミング言語には様々なものがあります。今、WEBサイト構築において、もっとも重視されているのが、JavaScript(ジャバスクリプト)です。
JavaScriptが開発されたのは1995年頃で、すでに20年近くの歴史がありますが、その間、数奇な運命を辿ってきました。今回のインターネット・トリビアでは、JavaScriptの足跡を振り返ってみたいと思います。
もともとJavaScriptは、JavaScriptという名前ではなく、このプログラミング言語を開発したNetscape Communications社では当初、LiveScriptと呼んでいました。ところが、当時Netscape社が提携していたSun Microsystems社が別のプログラミング言語、Java(ジャバ)を開発しており、LiveScriptはJavaとの親和性を打ち出すために、JavaScriptという名前に変更されたのです。
残念ながら、これが大きな禍根を残します。今でも混乱されている方が少なくないのですが、JavaとJavaScriptは全く異なるプログラミング言語です。JavaScriptは当初、ブラウザ内で動作するWEBページ用のプログラミング言語として出発しましたが、Javaは基幹業務を含めた汎用的なプログラミング言語として開発されました。両者は文法も異なり、互換性はありません。商業上の都合から似たような名前がつけられただけなのです。
出だしから波乱含みだったJavaScriptですが、世間に知られるようになってからも、あまり有効に活用されませんでした。JavaScriptはブラウザのなかで動作する簡易的なプログラミング言語のため、当初はブラウザに表示された文字や絵を多少操作する程度の機能しかありませんでした。また、その頃登場したMicrosoft社のInternet Explorerは、JavaScriptと互換性を持ったJScript(ジェイスクリプト)を搭載しましたが、両者には微妙な違いがあり、それに起因する動作の不具合にプログラマは悩まされました。
そのようにJavaScriptの有効な活用が進まないなか、「ブラウザの表示を書き換える」という機能を悪用して画面表示をごまかし、誤操作を誘発させる悪質なWEBサイトが出現するようになりました。結果、「JavaScriptはメリットよりデメリットのほうが大きい」という評判が定着してしまいます。なかには「JavaScriptは無効に設定するのが当たり前」といった極端な意見すらありました。
ところが、この評価を覆すサービスが登場しました。2005年頃に公開された「Googleサジェスト」と「Googleマップ」です。
それまでのWEBサイトは「マウスでクリックすると、次のページが開く」という動作が一般的で、クリックしてから次の画面が開くまでに一瞬の間が空き、利用者にもたつきを感じさせました。しかしGoogleが作ったこれらのWEBサイトでは、いちいちページを切り替えることなくスムーズに次の情報が表示されました。この革命的な手法にJavaScriptが使われていたことが知られ、世間のJavaScriptに対する印象が一変したのです。
のちにこの手法は「Ajax(エイジャックス)」と名づけられ、Google以外のWEBサイトにも広く活用されました。その過程でJavaScriptの仕様や周辺ツールが整備され、プログラマにとって利用しやすい環境が整っていきました。
そしてJavaScriptは「ブラウザ内で使う簡易プログラミング言語」という枠を越え、サーバ上で動作するプログラムを書くために使われたり、スマートフォンのアプリ開発に使われたりするようになりました。今ではJavaScriptは、人気と実力を兼ね備えた立派なプログラミング言語として認知されています。
ここまで評価が一変したプログラミング言語というのも、珍しいのではないでしょうか。