IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.newsで連載しているコラム「インターネット・トリビア」と連動しています。
コラムの前半部分はIIJ.news vol.114(PDFで公開中)でご覧下さい。

今回のテーマは「電話とインターネット」です。後編は、従来の電話に置き換わりつつあるIP電話サービスについてのトリビアを紹介します。

さて、様々なサービスが提供されている「IP電話」ですが、実は三種類に分類できます。その見分け方は、電話番号です。

一つ目のグループは、「0AB-J番号」を使うサービスです。「0AB-J番号」というのは、アナログ電話1でも使われてきた「市外局番-市内局番-加入者番号」と同じ番号体系です。IP電話であっても電話の設置地域毎に市外局番が割り振られており、番号からはそれがIP電話かアナログ電話かは区別がつきません。

二つ目のグループが、「050番号」を使うサービスです。こちらは一目瞭然、番号だけでIP電話とすぐに判ります。そして、050番号は携帯電話と同じように地域を表す局番がありません。

最後のグループが電話番号を使わないサービスです。これはパソコンやスマートフォンのメッセンジャーサービスと組み合わせて提供されているケースが多いでしょう。このようなサービスでは、電話番号を利用しない代わりに、一般的な電話網とは繋がっておらず、通話ができるのはサービス内に限られています。2

IP電話の種類
1. 0AB-J番号 2. 050番号 3. 電話番号無し
電話番号の例 03-5205-0000 050-7300-0000 なし
一般電話との通話 可能 可能 不可能
端末設置場所 固定 既定無し 既定無し
要求される品質 高い(アナログ電話並) 大幅に緩和 基準無し

さて、この「0AB-J番号」のサービスと「050番号」のサービス。実は電話番号以外にも違うところがあります。「0AB-J番号」のサービスは市外局番が使われていることからも判るとおり、原則として端末(電話機)の設置場所が固定されているということが前提になっています。これに対して050番号は設置場所が固定されていなくても構わないので、スマートフォン向けのIP電話サービスなども提供することが可能です。

さらに、もう一つ重要な違いとして通話サービスの品質に関する既定が異なります。「0AB-J番号」のサービスは見た目がアナログ電話と違わないということで、通話品質も「アナログ電話並み」とすることが法律で定められています。前編でも「電話はインターネットにとって大先輩です」と紹介しましたが、実は、通話という部分に限ればアナログ電話で提供されるサービスはとても高品質です。それをIP電話で再現するためには、品質を保証するための様々な仕組みが必要になります。「0AB-J番号」のIP電話サービスには、こういった品質保証のための仕組みを備えることが条件になっています。一方、「050番号」のサービスでは、この品質基準は大幅に緩和されています。

事業者との間のネットワーク
事業者との間のネットワーク

「0AB-J番号」を使うIP電話サービスでは、さらにもう一つの特徴があります。先に挙げた通信品質を維持するためには、IP電話に利用するネットワーク内でIP電話用の通信とインターネット向けの通信を分けて扱う必要があるとされています。このため、「0AB-J番号」を使ったIP電話サービスでは、利用者の宅内に設置される電話用の機器までのネットワークを事業者自身が管理しています。このため、利用者の宅内に設置される機器と事業者の間でインターネットを通過することはありません。「050番号」を使う場合は、このような品質に関する既定がないため、インターネットを介するようなサービスを提供することも可能です。

参考: IP電話に求められる品質3
  1. 0AB-J番号 IP電話 2. 050番号 IP電話
呼損率 呼損率0.15以下等
総合品質 端末~端末間で R 値 80 超、平均遅延 150 ミリ秒未満等 端末~端末間で R 値 50 超、平均遅延 400 ミリ秒未満等
ネットワーク品質 UNI~UNI 間は平均遅延 70ミリ秒以下、パケット損失率 0.1%以下等、UNI~NNI間は平均遅延 50 ミリ秒以下、パケット損失率 0.05%以下等 既定無し
安定品質 アナログ電話用設備と同等の安定性が確保できるよう必要な措置を講じる 既定無し

ということで、電話番号から見たIP電話の分類について紹介しました。ここまで具体的なサービス名は挙げませんでしたが、「0AB-J番号」を使ったIP電話サービスの中で代表的なものはNTT東西の「ひかり電話」です。ひかり電話は従来使っていたアナログ電話の電話番号をそのままIP電話に引き継げると言うこともあって、加入者を伸ばしています。

そして、このひかり電話。これはNTTの基幹の電話網自体をIP電話化するという取り組みの一端でもあります。新聞などでも取り上げられている「NGN」というのがそれです。こちらもまた機会があればご紹介したいと思います。

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  1. ここでは「アナログ電話」と書いていますが、現在の電話網ではデジタル技術も併用されています。「従来から提供されている電話サービス」という意味でとらえてください。(総務省の資料の表記に準じています)なお、NTT東西のサービス名では「加入電話」と呼ばれます。 []
  2. 一部のサービスは「転送機能」を使って電話網と通話をやりとりすることができます。 []
  3. ここでは詳細な品質規定については紹介しません。表はhttp://www.soumu.go.jp/main_content/000177931.pdfの文書から引用しました。 []

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