IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます。
IIJ.news vol.123 もくじ
- ぷろろーぐ「廃棄処分」
- 特別対談「人となり」: 日本経済新聞社 代表取締役社長 喜多恒雄氏 × IIJ 勝 栄二郎
- Topics「加速するIIJの国際展開」
- 日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、シンガポール IIJグローバルサミット
- バックボーンはこうして延伸される
- コンテナ型データセンターモジュール co-IZmo/Iの海外展開
- 中国法人でのセキュリティ診断
- 中国IT読本
- 連載
- 人と空気とインターネット 「取捨選択する力」
- インターネット・トリビア 「冗長化」 ※この記事で掲載
- グローバル・トレンド(新連載) 「ベトナム人気質」
インターネット・トリビア 「冗長化」
インターネット関連の技術用語には、舌を噛みそうなものがいくつもあります。「冗長化(じょうちょうか)」も発音しにくい単語の1つですが、インターネットや IT システムについて考えるうえで、とても重要な事柄です。今回はこの「冗長化」を紹介します。
IT システムで利用される機器は、頻度の高低はともかく、いずれも故障の可能性があります。機器が故障すると、当然、IT システムは利用できなくなります。
故障した機器を修理・交換すればシステムは復旧しますが、それをいちいち手作業で行なっていると、とても時間がかかります。システムが利用できない時間をできるだけ短くするには、何らかの手を打たなければなりません。その1つの手段が冗長化です。
冗長化にはいくつかの方法がありますが、基本的な考え方は、「予備の設備を準備しておく」「故障時は速やかに予備の設備に切り替えて、システムの動作を継続する」という2点です。
もっとも単純な冗長化は、同じ動作をする設備を2系統設置することです。片側を常時稼働させておき、故障時には待機していたもう片側の設備に切り替えて、処理を継続します。このような構成を「アクティブ・スタンバイ構成」と言います。
アクティブ・スタンバイ構成はシンプルな考え方ですが、設備を片側だけしか常用できないので、全体的な能力から見ると設備が半分しか活用されておらず、もったいなく感じてしまいます。
他方、設置した全ての設備を有効活用する方法として「アクティブ・アクティブ構成」があります。これは、2系統の設備を稼働状態にしておき、通常時はその両方で処理を行なうというものです。設置した設備の両方を活用できるため、無駄がないように見えますが、いざ設備が故障すると能力が通常時の半分になってしまいます。そのことを念頭に置いた設計をしていないと、故障時に設備の能力が不足して、システムが停止してしまうようなことになりかねません。
通常時に同じ用途の設備が2台以上稼働するシステムにおいては、「n+1構成」をとることもあります。n は常時稼働している設備の台数を指していて、例えば、常時5台の設備が稼働しているなら、「5+1=6台分」の設備を用意しておくという方法です。5台のなかのどれか1台が故障した場合、+1の予備機が交替して動作します。「n+1」では、故障は1台までしか許されず、2台同時に故障するとシステムが停止してしまいます。稼働台数が多いシステムでは、「n+2」や「n+3」など、予備機を2台、3台と増設し、故障に対する耐性を高める場合もあります。
冗長化は、適用する IT システムの種類によって、選択すべき手法が異なります。例えば、通信ネットワークに対しては、一般的にアクティブ・スタンバイ構成を適用しますが、アクティブ・アクティブ構成をとることも原理的には可能です。しかし、データセンターの電源設備などは、故障時に供給電力が足りなくなることは絶対に避けなければならないので、アクティブ・アクティブ構成はとらず、n+1構成か、アクティブ・スタンバイ構成をとります。
冗長化は、故障時のシステム停止時間を短縮するために導入するものですが、万能というわけではありません。また冗長化のために予備の設備を設置することは、コストの上昇につながりますので、コストを優先するシステムでは、システムの停止時間とのトレードオフを考えながら、別の手法をとる必要も出てきます。
さらに冗長化したシステムには、設備を切り替えるための何らかの機能が必要になります。こうした機能はシステム本来の動作には不要ですし、切り替え機能自体が故障の原因になることも考えられます。故障時に切り替えが正しく動作するかというテストも含め、複雑なシステムの維持には手間もかかりますので、冗長化によるメリット/デメリットを考慮した設計が必要となります。
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