テザリングが使えなくなりました
SIMカードを取り付けて通信が行えるiPadは、日本国内ではSoftBank、auから販売されています。(2014年6月10日より、docomoからも販売されます)これとは別に、海外で販売されている「SIMフリー」版のiPadを購入し、IIJmioのSIMカードを取り付けてご利用されている方もいらっしゃるかと思います。
従来、このSIMフリー版のiPadでは一通りの機能が問題なく利用できていました。ですが、5月31日に配信された「キャリア設定(キャリアプロファイル)のアップデート」を適用したiPadでは、インターネット共有(テザリング)が利用できなくなりました。Wi-Fi、USBケーブル、bluetoothのいずれも利用できません。対象は現行モデルのiPadだけでなく、発売済みのSIMフリーiPadすべてです。1類似の事象はiPhoneでも発生しましたが、影響が現行モデル(iPhone 5s/5c)だけにとどまっていたiPhoneと比べ、iPadでは過去のモデルにまで影響が出てしまいました。
アップデート後のキャリア設定「ドコモ 16.2」の状態でも、インターネット共有が利用できない以外は特に問題は無いようです。IIJにあるiPadではLTEも利用できています。
IIJmio SIM取り付け時のiPad 動作状況 (2014/06/03時点)
機種 | iPad mini Retina | iPad Air | iPad 4 | iPad mini | iPad 3 | iPad 2 |
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型番 | A1490 | A1475 | A1460 | A1455 | A1430 | A1396 |
種別 | SIMフリー版 | |||||
SIMカードタイプ | nanoSIM | nanoSIM | microSIM | nanoSIM | microSIM | microSIM |
OS | iOS 7.1.1(11D201) | iOS 7.1.1(11D201) | iOS 7.1.1(11D201) | iOS 7.1.1(11D201) | iOS 7.1.1(11D201) | iOS 7.1.1(11D201) |
キャリア設定 | ドコモ 16.2 | ドコモ 16.2 | ドコモ 16.2 | ドコモ 16.2 | ドコモ 16.2 | Carrier 16.1 |
3Gでの通信 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
LTEでの通信 | ○ | ○ | ○ | ○ | 未対応※3 | 未対応 |
キャリア名の表示 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ※1 |
アンテナピクトの表示 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ※2 |
テザリング | ※4 | ※4 | ※4 | ※4 | ※4 | 未対応 |
プッシュ通知(APNs) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | – |
- ※1: SMS対応SIM・音声通話対応SIM(みおふぉん)を利用すると、キャリア名が表示されます。
- ※2: SMS対応SIM・音声通話対応SIM(みおふぉん)を利用すると、アンテナピクトが表示されます。
- ※3: iPad 3は、本体に組み込まれている通信モジュールが、国内のLTE網で利用されている周波数に対応していないため、LTEでの通信は行えません。
- ※4: キャリア設定(キャリアプロファイル)が「ドコモ 16.2」の状態のiPadでは、テザリングが利用できません。「Carrier 16.1」 以前の状態でであれば、テザリングが利用できます。
IIJmio高速モバイル/D iOS別 iPhone・iPad動作状況にて、iPhone・iPadの最新の動作確認情報をまとめています。
元に戻す方法はある?
キャリア設定のアップデートが行われる際には、iPadの画面に次のようなメッセージが表示されます。ここで「今はしない」を選択すればアップデートは行われません。iPadを以前の設定で利用し続ける限りは、インターネット共有も従来通り利用できます。
もし、すでにアップデートを行ってしまった場合は、以下の手順で以前のキャリア設定に復元できる場合もあります。一度iPadを初期化する必要があるため、操作には注意が必要ですが、どうしてもインターネット共有が必要な方はお試し下さい。
- iTunesがインストールされたパソコンを用意する
- iPadとパソコンをUSBケーブルで接続する
- パソコンでiPadの内容をバックアップする
- iPadの「設定」で、「一般」→「リセット」→「すべてのコンテンツと設定を消去」を実行する
- iPadが完全に初期化されます
- 初期化完了後、パソコンのiTunesの画面に、iPadを新しく設定するか、バックアップから復旧するかの選択画面が表示されるので、「バックアップから復旧する」を選択する
- ここでキャリア設定をアップデートするか確認画面が表示されても、アップデートは行いません
IIJ社内にあるiPadで試したところ、この方法でキャリア設定のアップデートを回避することができました。すべてのiPadで同じ方法が通用するかどうかはわからないのですが、お困りの方は参考にして下さい。
なお、これらの方法が利用できるのは、次のiOSのアップデートが出るまでです。iOSのアップデートには最新のキャリア設定が含まれているため、iOSのアップデートと同時に自動的に最新のキャリア設定が適用され、以前のものに戻すことはできなくなります。
「キャリア設定のアップデート」とは?
「キャリア設定」は、iPhoneやiPadの中に組み込まれている設定ファイルの一つです。この中には、世界中のモバイルキャリア(携帯電話事業者)の情報が書き込まれており、iPhone・iPadに取り付けたSIMカードに合わせて、iPhone・iPadを自動的に設定するようになっています。
今回配信された新しいキャリア設定では、今まで登録がなかったdocomo用iPadの情報が追加されたものと思われます。
IIJmioはdocomoの通信網を利用したMVNOです。また、IIJmioのSIMカードに書き込まれている情報はdocomoのものと区別がつきません、そのため、IIJmioのSIMカードを使っている場合でもキャリア設定のなかのdocomo用の設定が有効になってしまったのだと思われます。
キャリア設定には、インターネット共有の可否以外に、APNの設定も含まれています。iPhone 5s/5cではAPNの設定画面が表示されないというのも、このキャリア設定の記述のためです。
iPhone・iPadにはキャリア設定以外に、構成プロファイルという仕組みがあります。APNの設定はこの構成プロファイルを使って上書きができるため、iPhone 5s/5cでも、IIJmioで用意したAPN構成プロファイルを使えばAPNの設定をすることができました。しかし、インターネット共有の可否は構成プロファイルで上書きすることができません。残念です。
当面の間は、前述の通りアップデートを無視することでiPadでインターネット共有を使い続けることができますが、iOSのアップデートが行われると回避はできなくなると思われます。iPadでインターネット共有をお使いの方は、今のうちに他の通信方法をご検討頂ければ幸いです。
おことわり
記事執筆時点の実験結果です
この記事でお知らせする内容に限らず、Apple社の製品はiOSのアップデートによって挙動が変わってしまうことが度々発生しています。また、あるiOSで実現していた動作が、想定通りの挙動なのか、想定外の挙動(バグ)なのか、明確ではありません。今回、記事執筆時点で入手できる最新のiOSを用いて実験を行いましたが、今後のiOSのアップデートでもこの挙動が維持されるかどうかは不明です。あくまで記事執筆時点での実験結果としてご覧下さい。
iPhone・iPadのSIMロックについて
SoftBank・auから発売されているiPhone・iPad
SIMロックを解除することができないため、IIJmioのSIMでは利用できません。
docomoから発売されているiPhone
IIJmioのSIMで利用できます。SIMロックを解除する必要はありません。
SIMフリー版iPhone・iPad
日本の「技術基準適合認定」マークが表示されるものは利用可能です。
技術基準適合マークがないiPhone 5s・iPhone 5cは、動作確認を行っていません。
iPadは3Gモデル(LTEモデル・4Gモデル)を利用しています
Wi-Fi専用モデルではSIMカードを利用した通信は行えません。
動作の改善について
各種iOSデバイスについて、「○○の動作を△△して欲しい」というご要望を頂く事があります。IIJでは以前よりApple社に対して情報提供を続けていますが、それぞれの件がiOSに反映されるかどうかの返答は受け取っていません。今後iOSの更新がどのように行われるかはIIJではわかりかねます。
- もともとインターネット共有機能が無いiPad2を除く [↩]