IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.142 もくじ

iijnews142

  • ぷろろーぐ「交代」 鈴木 幸一
  • Topics One Cloud
    • マルチクラウド環境をサポートするIIJのOne Cloud
    • ネットワークのクラウド化
    • 効率的かつ効果的なクラウド活用を目指して
    • 運用現場から生まれたIIJ統合運用管理サービス
    • CASBを活用しマルチクラウドをコントロールする
    • SaaSに自在に往来できる現代版の「通行手形」
  • 人と空気とインターネット 人間の人間らしさ
  • Technical Now
    • IIJ Omnibusサービス 事例紹介
  • インターネット・トリビア 行きはよいよい帰りは怖い ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド 西アフリカのブルキナファソをご存知ですか?

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: 行きはよいよい帰りは怖い

インターネットは企業、大学、ISP などの複数のネットワークが相互につながって構成されています。インターネットを使った通信では、やり取りされるデータがパケットという単位に分割され、ネットワークのあいだをパケットがバケツリレーのように受け渡されながら目的地まで運ばれていきます。

実際のインターネットでは、出発地から目的地まで無数の辿り方が考えられます。そのなかから目的地に向かう道筋を見つけるための情報を「経路情報」と呼びます。

あるネットワークに設置されたルータは、自分が所属するネットワークと相互に接続する他のネットワークから情報を受け取ります。各ネットワークから受け取った全ての情報を集約・計算することで、自分のネットワークで使用する経路情報を生成しているのです。

ネットワークの相互接続の形が変化したような場合でも、こうした仕組みによって情報が共有され、最新の経路情報が生成されます。インターネット全体の構成を管理する組織がなくても、複数のネットワークにまたがった通信が実現できるのはこのためです。

こうした通信経路の選択にまつわる面白い話を一つご紹介しましょう。

インターネット上で通信を行なうとき、例えば、ホームページを見るときは「サーバからデータをダウンロードする」、メールを送信するときは「パソコンからサーバにデータを送信する」といった具合に、データが一方向に流れることをイメージしがちです。しかし実際には、データが欠落なく送られているのかを確認したりするために、双方向の通信が発生しています。また、双方向の通信は行きと同じ道筋を辿って戻ってくると思いがちですが、実際のインターネットではそうとは限りません。行きと異なる道筋を通って帰ってきてしまうという現象があります。これは、各ネットワークで利用される経路情報が、それぞれのネットワーク毎に生成されており、行きと帰りで経路情報が対称的になっていない可能性があるからです。

通信の行きと戻りの経路が異なった場合、必ず問題が発生するというわけではありません。しかし、経路の選択によっては、行きと戻りで通信にかかる遅延時間が大きく異なったりして、通信のパフォーマンスが低下するといった支障が出ることもあります。

このような事象でやっかいなのは、実際にインターネット上でどのような経路を辿ってデータがやり取りされているのかを簡単に調べる術がないということです。

ネットワーク調査・管理のためのツールとしては、traceroute が知られています。手元の端末で traceroute を使うと、指定した端末まで到達する際にどのようなネットワークを経由したのかを表示できます。しかし、traceroute で調べることができるのは、行き方向の通信のみで、戻り方向の通信がどのようなネットワークを通ったかを調べることはできません。戻り方向を調査するためには、反対側の端末から traceroute を行なう必要がありますが、それには、通信先のサーバの管理者や、そのネットワークの管理者に連絡を取って助力をとる必要があるでしょう。

インターネットは自律的に動作する全世界規模のネットワークとしてよくできた仕組みではありますが、自律的に動作するがゆえに、その挙動を完全にコントロールできるわけではありません。ネットワークを研究・開発・運用するエンジニアは、ネットワークの現状を調査するためのツールや、何かが起こった場合に速やかに事態を収拾するための運用体制づくりなど、インターネットの安定に向けた取り組みを日々続けています。