IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.156 もくじ

iijnews155

  • ぷろろーぐ「1968年」 鈴木 幸一
  • 特別対談 人となり
    政治家、元内閣総理大臣 福田 康夫 氏
    IIJ 代表取締役社長 勝 栄二郎
  • Topics "IIJ 電子@連絡帳" でつながる 医療・介護・福祉・くらし
    • くらしを支える専門職ネットワーク
    • IIJ電子@連絡帳サービスとは?
    • 電子@連絡帳を基盤とした「地域とくらしを支える」ネットワーク構築
    • 在宅医療・福祉連携の推進における電子@連絡帳の活用 愛知県豊田市
    • 茨城県常総市 JOSOシステム災害時を想定した多職種連携ネットワーク
    • 患者・家族参加型の小児在宅医療支援ネットワーク長野しろくまネットワーク
    • 医療 MaaS(Mobility as a Service)が実現する未来
  • 人と空気とインターネット: 初心忘るべからず
  • Technical Now: IIJ IDサービス 事例紹介
  • インターネット・トリビア: 携帯電話の電話番号が足りない! ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド: 世界最大級の情報通信業界見本市 タイで開催

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: 携帯電話の電話番号が足りない!

国内の携帯電話(スマートフォンやPHSなどを含む)は、2001年の時点では6千万~7千万契約程度でしたが、2011年には1億2千万契約を超え、計算上「一人一台」を突破しました。その後も契約は伸び続け、2019年には1億8千万契約に達しています。そして、携帯電話の契約はまだまだ伸びると予測されています。

これだけ多くの携帯電話が使われると、さまざまなものが足りなくなってきます。その一つが電話番号です。電話は国際電話を経由して他の国ともつながっているため、国内の電話番号も、国際機関(ITU-T)が定めたルールにもとづいて使わなければなりません。そのため、日本で利用可能な電話番号の数には限りがあります。有限な資源である電話番号を、携帯電話、固定電話、IP電話などでどのように使い分けるかという「電話番号計画」は、日本では総務省が担当しています。

総務省の資料によると、一般的な携帯電話やスマートフォンで使われている090・080・070から始まる11桁の番号は、合計で2億7千万の番号が用意されています。ずいぶん多いように感じますが、これらの番号のうち90.4パーセントはすでに分割して各携帯電話会社に割り当てられており、残りはごくわずかです。このため、今後携帯電話に利用するために、060で始まる番号から最大9千万追加することが予定されています。

一方、電話番号の割り当てを受けた携帯電話会社でも、電話番号をできるだけ節約して利用することが求められています。その一つの取り組みが、電話番号の再利用です。新しく契約した携帯電話に新しい電話番号を割り当てるのではなく、解約によって未使用になった電話番号をもう一度割り当てているのです。解約から再利用の間にはある程度の期間が空けられてはいますが、久しぶりに電話をかけると全く違う人に電話がつながった、といったことも起こってしまいます。最近では、フリマアプリなどで電話番号を使って会員登録することもありますが、携帯電話の解約前にアプリの会員登録を抹消しておかないと、全く無関係な人が以前の利用者としてアプリを使えてしまうといった事故も起こり得ます。

スマートフォンや携帯電話のように人が持ち歩く機器だけでなく、直接人間が利用しない「IoT機器」のなかには、携帯電話網への接続機能を持ったものがあり、こうした機器も電話番号を消費します。そしてIoT機器は、従来の人間が使う機器と比べて、一人が使う台数が圧倒的に多くなる可能性があります。例えば、農業の省力化を行なうためのあるプロジェクトでは、約7ヘクタールの水田に400個のIoT機器を設置し、インターネット経由で数人の農家の方が管理しています。もしこれらの機器の一つひとつが携帯電話網への通信機能を持った場合、数人で400個もの通信機、つまり400の電話番号を利用することになります。これは、人が持つものと比べると桁違いに大量の電話番号を消費していることになります。

このようにIoT機器が携帯電話網を活用する時代の到来に備えて、総務省は通話や人間のコミュニケーション以外の用途で利用するために、020から始まる8千万の電話番号を用意しました。現在、携帯電話各社やMVNOで音声通話をともなわない「IoT用」の通信契約を行なうと、020番号が割り当てられます。しかし、この8千万は一時しのぎにしかならず、2022年には使い尽くすだろうと考えられています。さらなる対策として、総務省は020番号の桁数を11桁から14桁に拡張することを予定しています。これにより、最大100億の電話番号を追加できるようになるとされています。

なお、電話番号が拡張されるのはあくまでIoT用の契約のみです。人間が利用する一般的な携帯電話・スマートフォンは、従来どおり11桁のままですので御安心ください。