IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.155 もくじ

iijnews155

  • ぷろろーぐ「師走になると」 鈴木 幸一
  • Topics "IT Topics 2020"
    • Topic 01 デジタル通貨の時代が来た!
    • Topic 02 モバイル
    • Topic 03 IoT
    • Topic 04 コンテンツ配信
    • Topic 05 クラウド
    • Topic 06 ネットワーク
    • Topic 07 データセンター
    • Topic 08 個人情報保護法
    • Topic 09 ヘルスケア
    • Topic 10 セキュリティ
    • Lead Initiative 2019 開催レポート
  • 人と空気とインターネット: どこかで聞いた話
  • Technical Now: IIJセキュリティソリューション 事例紹介
  • インターネット・トリビア: 電波の種類(周波数) ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド: サウジアラビアの花火大会に出演
  • ライフ・ウィズセーフ: フェイクニュース

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: 電波の種類(周波数)

スマートフォンや IoT センサなど電波を使った通信は、さまざまなところで使われています。ただ、ひと口に電波と言っても、用途や事業者によって多くの種類があります。電波にはどのような種類があるのでしょうか?

また、種類によってどのような特徴があるのでしょうか?

今回は、特に「周波数」に着目したいと思います。

周波数は、皆さんの身近なところでも目にすることがあります。一番わかりやすいのはラジオ放送でしょうか。関東一円において、 NHK ラジオ第1放送は 594kHz という周波数を、NHK ラジオ第2放送は 693kHz を使っています。最近はワンタッチで放送を選べるようなラジオが多くなっていますが、昔ながらのラジオの場合、数字が書かれた物差しのような表示板があり、針を 594 に合わせればラジオ第1を、693 に合わせればラジオ第2を聞くことができます。つまり、周波数が異なると、別々の音声を流せるのです。

実際には 594kHz ぴったりの電波だけが使われているわけではありません。ラジオ第1では、指定された周波数を中心に 15kHz 分の幅を持った電波を使っていいことになっています。これは、物差しのうえでは 586.5~601.5 という幅を使っていることになります。このように、電波で通信を行なう場合、ある程度の幅の周波数をまとめて使います。ちなみにテレビは、周波数を直接指定する代わりに、チャンネルという番号で指定します。東京スカイツリーから送信されている NHK 総合テレビは、地デジの 27 チャンネルというチャンネルが割り当てられており、これは 557.142857MHz を中心とした 5.57MHz 分の幅と決められています。

周波数の幅は、伝えられる情報量にも影響します。先ほどの例で言えば、ラジオの周波数幅(15kHz)とテレビの周波数幅(5.57MHz=5570kHz)を比べると、370倍以上の差があります。これは、地デジの高精細な映像は、それだけ情報量が多いためです。

周波数は、電波の伝わり方にも影響します。電波は発信場所であるアンテナから一直線に進み、途中に障害物があると遮られて、その後ろには届きません。障害物の性質によっては、跳ね返って異なる方向に飛んでいくこともあります。障害物とは、山などの地形、ビルなどの人工物、そして、空気中に浮かんでいる水(水蒸気)なども含まれます。

ただ、電波の周波数によって、この状況は変わります。周波数が低い(数字が小さい)電波は、障害物にぶつかった場合でも、障害物の後ろに回り込んで進む性質があります。反対に周波数が高い(数字が大きい)と、この回り込みはほとんどありません。また、低い周波数の電波は、あまり水の影響を受けませんが、高い周波数の電波は、水の影響を受けやすく、雨が降ると電波が届きにくくなったりします。衛星放送は、雨が降ると画像が乱れることがありますが、これは衛星放送で使っている電波の周波数が非常に高いためです。

ここ数年、次世代携帯電話網として 5G が話題になっています。5G による携帯電話網を構築するにあたって、どの周波数の電波を使うのか議論されました。前述のとおり、周波数の低い電波であれば、ある程度、電波の回り込みを期待でき、例えば、ビルの陰など基地局のアンテナが直接見えない場所でも、スマホを使うことができるため、低い周波数が使えるなら、それに越したことはありません。しかし、低い周波数の電波は、これまでの 3G・4G(LTE)や、その他の通信システムで利用されており、ここに 5G を割り込ませると、十分な幅の電波が確保できません。

そこで 5G では、従来の携帯電話網に近い周波数の電波と、高い周波数の電波を併用することになりました。高い周波数の電波は利用が限定的なので、思い切って広い幅の電波を確保しやすく、今後の携帯電話網の需要増にも応えられると考えられたためです。

このように携帯電話網の整備では、特徴の異なる周波数の電波をうまく活用していくことが重要になっています。