IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.news連載コラム「インターネット・トリビア」を転載したものです。IIJ.newsはご希望者へ郵送でお送りしています。また、IIJ WebではPDF版をご覧頂けます

IIJ.news vol.153 もくじ

iijnews153

  • ぷろろーぐ「眠り病」 鈴木 幸一
  • 特別対談 人となり
    政治家・元内閣総理大臣 小泉純一郎 氏
    IIJ 代表取締役社長 勝 栄二郎
  • Topics オフィスITにまつわるお悩み解決
    • SaaS導入の観点から見たオフィスIT環境の課題を解決したい
    • オフィス・ネットワーク環境を整備したい
    • エンドポイントセキュリティ対策を強化したい
    • 快適なリモートアクセスを実現したい
    • ITインフラの運用に携わる人材不足を改善したい
    • クラウド利用時の認証を改善したい
    • 海外拠点のITインフラの課題を解決したい
    • 基本的なセキュリティ対策を確実に行いたい
  • 人と空気とインターネット: インターネットで広がる新たなビジネスモデル
  • インターネット・トリビア: 無線LANとWi-Fi ※この記事で掲載
  • グローバル・トレンド: カリフォルニアでのデータ規制
  • ライフ・ウィズセーフ: シーサートに必要なこと

それぞれの記事はIIJ.news PDF版でお読み頂けます。

インターネット・トリビア: 無線LANとWi-Fi

皆さんのご家庭でも、オフィスでも、パソコンをネットワークにつなぐとき、LANケーブルを使うことが少なくなっていないでしょうか?特に家庭ではLANケーブルをつなぐより、「無線LAN」のほうが普及しているかもしれません。実際、家庭用のインターネットサービスでレンタルされる機器には最初から無線LANの機能が搭載されていたり、そうでなくても数千円程度で「無線LANのアクセスポイント」を入手できます。以前はイマイチだった通信速度も改善され、日常的な利用には支障ありません。

ところで、こういった無線LANのことを「Wi-Fi」と言うことがあります。実は「無線LAN」と「Wi-Fi」には使い分けがあることをご存じでしょうか?

「無線LAN」「WLAN(Wireless LAN)」は特定の技術を指すのではなく、ケーブルを使わないLAN全般を指す言葉です。ただ、各メーカの製品が勝手バラバラだと不便なので、共通の規格に沿った製品を作ることが一般的です。

現在使われているのは、IEEEという国際的な電気・電子関連の専門家団体によって定められた通信規格で、担当する802委員会ワーキンググループ11の名前をとって「IEEE 802.11」というシリーズで呼ばれています。IEEE 802.11シリーズのなかには利用する電波の種類(周波数や無線技術)によっていくつかのバリエーションがあり、「IEEE 802.11g」や「IEEE 802.11ac」などと名付けられています(製品のパッケージは「11g」や「11ac」と省略形で書かれることも多いようです)。「無線LAN」と言えば、ほぼこのIEEE 802.11シリーズの通信規格に対応したものを指すと考えていいでしょう。

では、「Wi-Fi」とは何でしょうか?これを説明するには、無線LAN対応製品の登場直後のことを振り返る必要があります。2000年前後に無線LAN機器が市販されるようになった直後は、その製品がIEEE 802.11シリーズに対応していると表示されていても、メーカが異なると正しく通信できない場合がありました。新規格に沿った製品が出始めた頃にはよくあることで、規格が曖昧でメーカによって解釈が違っていたり、規格制定のタイミングでは想定されていなかった課題があとから見つかったりするためです。

こうした状況は無線LAN普及の妨げになるので、有力メーカが集まって互いの製品が通信可能か試験して、認定を与える団体を立ち上げました。この認定を通った製品に表示されるのが「Wi-Fi」(Wi-Fi CERTIFIED)という名称とロゴです。Wi-Fiロゴが表示されている商品であれば、メーカが異なっていても通信可能なことが確認されており、購入者は一定の安心感が得られます。

ロゴを認定する団体は、当初は Wireless Ethernet Compatibility Alliance(WECA)と名乗っていましたが、現在は Wi-Fi Alliance に改称しています。

なお、Wi-Fiはあくまでも「Wi-Fi Allianceの試験をパスした」という印です。Wi-Fi表記やロゴの使用は、Wi-Fi Allience によって制限されていますが、IEEE 802.11シリーズの規格自体は公開されているため、Wi-Fiロゴがない製品でも、IEEE 802.11シリーズ対応機器として利用できますし、Wi-Fiロゴがある製品とも通信可能です。実際に市場を見ると、最新の機器でもWi-Fiロゴを表示せず、「IEEE 802.11シリーズ対応無線LAN機器」としてメーカ独自の試験を経たうえで販売されているものもあります。こうした機器も実際の利用には支障はありませんが、厳密な意味ではこれらを「Wi-Fi」と呼ぶのは正しくないということになります。