IIJでは広報誌「IIJ.news」を隔月で発行しています。本blogエントリは、IIJ.newsで連載しているコラム「インターネット・トリビア」と連動しています。
コラムの前半部分はIIJ.news vol.113(PDFで公開中)でご覧下さい。
冊子に掲載した前編では、主にオフィスに設置されるパソコンの消費電力について紹介しました。オフィスのパソコンが消費する電力、発生させる熱も気になる問題ですが、コンピュータが大量に設置されているデータセンターではより一層深刻な問題となります。データセンターを利用する各事業者は、電力や熱について「省エネ」の努力を続けています。後半では、この省エネを測る指標について紹介したいと思います。
電力を無駄なく使うために
オフィスビルの空調はコンピュータだけでなく人間も使うため、コンピュータの冷却にかけるコストとしてはあまり意識されません。しかし、データセンターにおいては人間より遥かに多い、数千台~数万台のコンピュータが設置され、それを冷却するためだけの専用の空調が設置されています。この規模になってくると、コンピュータの冷却に関するコストというものを意識せざるを得ません。
これらの空調機器は電気を使って動いています。つまり、データセンターではコンピュータだけでなく、空調機も大きな電力を消費しているのです。空調機を動かすための電力は欠かすことができないものですが、「コンピュータを動かす」という本来の目的からすると、二次的なものであり、できれば削減したい部分です。
そこで、データセンターにおいて空調などを含む「コンピュータ以外」の消費電力がどれだけ効率化されているか測るための「PUE」という指標があります。
昨今の電力事情の悪化、省エネの要請を受けて、各地のデータセンターはPUEの値を改善するための努力を続けています。設備のPRでも「PUE○○を達成!」と言った文句が使われることもよくあります。
性能を考慮した電力利用の効率指標
しかし、このPUEという指標、真の省エネ化という意味では十分ではありません。
PUEは、あくまで消費電力だけに着目した指標であり、コンピュータの性能や省電力性は考慮されていないためです。
たとえば、同じ消費電力・発熱でより性能の高いコンピュータを導入したとします。同じ消費電力でより沢山の処理が行えるのであれば、「省エネ」のはずですがPUEの計算方法では測ることができません
そこで、コンピュータの性能と消費電力を測るための指標が利用されています。よく使われる指標の一つにMFlops/Watt(メガフロップス/ワット)があります。Flopsはコンピュータが行う特定の計算が1秒間にどの程度行えるかを示す指標です。数字が大きいほど計算能力が高いことを意味しています。これを、その計算を行うために必要な電力で割ることで、そのコンピュータがどれだけ効率的かを表しています。
総合的な指標を作る取り組み
ところが、MFlops/Wattで測れるのはコンピュータの計算能力だけです。実際にデータセンターに設置される機器類は、データを保存するためのストレージや、それらを繋ぐためのネットワーク機器もあります。こういった機器ももちろん電力を消費し、熱を発生させているのですが、MFlops/Wattではこれらの機器の効率を測ることができません。
また、コンピュータの効率やデータセンターの効率など、それぞれの効率だけを個別に論じるだけでは、最終的なシステム・設備の省エネ度合いを比較することが困難です。
そこで、PUEや各機器の効率を含めて考えるための、総合的な指標が検討されています。その一つがDPPEです。
DPPEは、IT機器(サーバ・ストレージ・ネットワーク)の稼働効率・省エネルギー性、データセンターの省エネルギー性・グリーンエネルギー利用比率の4つの項目をまとめて評価することを目論んでいます。
- データセンタの省エネ度評価指標【DPPE】について(グリーンIT推進協議会)
このように、一口に「省エネ」と言っても、それを数値で表すためには様々な工夫が必要になります。DPPEのように総合的な指標の普及が期待されています。